2012 Fiscal Year Research-status Report
国連安保理に対する法的コントロールの実証研究:国際組織における立憲主義の模索
Project/Area Number |
24730034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
丸山 政己 山形大学, 人文学部, 准教授 (70542025)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際立憲主義 / 安全保障理事会 / 狙い撃ち制裁 / 法的コントロール / 保護する責任 / 国際刑事裁判 |
Research Abstract |
平成24年度は,当初予測していた通り欧州人権裁判所が狙い撃ち制裁に関する重要な判決(Nada対スイス大法廷2012年9月12日判決)を下したため,その分析を行い判例評釈として公表した。狙い撃ち制裁に関連してこれまで人権侵害を認定したもしくは当該措置を無効・取消としたいくつかの国際・国内判例が出されていたが,締約国の義務違反認定を行った欧州人権裁判所の判決は,その延長線上に位置づけられる。 また,6月にアジア国際法学会日本協会第3回研究大会において,「国際法の立憲化とアジア」とのテーマで討論者としていくつかのコメントを行った。とりわけ,いわゆる「保護する責任」論に対して国際法の立憲化論ないし国際立憲主義の観点から検討する必要性があるとの問題提起を行った。 さらに,国際テロリズムに関連して,レバノン特別法廷が安保理による設置の合法性に関する決定(上訴裁判部2012年10月24日決定)を下したので,その判例分析も行った。決定それ自体は安保理に対するコントロールの観点から不十分であると評価されるが,個別意見の検討により,国際刑事裁判の分野においても,安保理による平和および安全の維持目的と(強行規範としての)被告人の公正な裁判を受ける権利との均衡性をはかる必要性があるということが明らかになった。 これらの研究成果の一部は,次年度に世界法学会(「国連安全保障理事会と国際法の「立憲化」―法的コントロールの問題を中心に―」とのテーマ)で報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通りに進展したとは必ずしも言えないが,本研究テーマとの関連でアジア国際法学会日本協会において問題提起をすることができた。また当初想定していた通り,欧州人権裁判所が本研究テーマに関わる重要な判決を下したため,その判例分析を行った。また,個人の刑事訴追に関する事例として,レバノン法廷の設置合法性に関する決定の分析も行った。上記の概要からもうかがえる通り,数年単位で動く状況への対処という意味もあり,また取り組んだ作業が多角的でもあり,やや散漫しているきらいもあるが,本研究を進めるうえでアプローチすべき諸問題について着実にかつ効率的に進めることができたと考える。当初平成24年度に行う予定であった安保理と総会の関係に関する考察は実質的に次年度に行うこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,前年度に行った分析・考察を世界法学会での報告に反映させて,それを論文としてまとめる作業に集中する。その際に,安保理と総会の関係や国連事務総長・人権関係機関(国連人権高等弁務官,人権理事会)などの国連内部におけるアクターの役割の分析・考察も同時並行的に行いつつ適宜同論文に反映させる。また,従来から継続している,国際刑事裁判所(ICC)と安保理の関係についても,法的コントロールないし国際立憲主義の観点から論点を整理したうえで論文執筆を行う。さらに,前年度予定していた海外インタビュー調査(於・米国ニューヨーク)を実務上の背景や海外の研究動向を探るために実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究は,①世界法学会における報告とその論文化(国連安全保障理事会と国際法の「立憲化」―法的コントロールの問題を中心に―),②法的コントロールの観点からみた国際刑事裁判所(ICC)と国連安全保障理事会の関係の論文化の2つが主要な柱となる。そこで,本年度必要な経費としては,最新の文献の購入費と論文の内容にかかわる資料収集のための国内旅費が主なものとなる。また,9月に米国・ニューヨークにてインタビュー調査を行うための外国旅費として使用する予定である。この海外調査は,法的コントロールの実態を調査・確認するとともに,その阻害要因がどのあたりにあるかを探るために必要となる。
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Research Products
(2 results)