2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 史子 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60362547)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際裁判管轄 / 海上運送 / 船荷証券 / 管轄条項 |
Research Abstract |
本研究の一次的な目的は,船荷証券等の管轄条項について,合意の拘束力,法政策,法の国際的な調和という視点から検討し,その有効性の根拠や近時の立法例における海上物品運送に関する管轄規則の妥当性を総合的に考察することである。 平成24年度は,文献の収集と検討を中心に研究を進めた.具体的には,2008年に「全部又は一部が海上運送による国際物品運送契約に関する国際連合条約」(ロッテルダム・ルールズ)が成立した後,英国において相次いで主要な体系書の改訂が行われたため,英国法の実務上の重要性に鑑みて,同国における議論を改めて調査した。また,2012年は欧州の国際裁判管轄規則(民事及び商事事件における裁判管轄及び裁判の執行に関する2000年12月22日の理事会規則,ブリュッセルI規則)の改正が行われ,活発な議論がなされていたため,同規則および欧州主要国の国際民事訴訟法に関する文献を収集した。欧州以外の国の法状況についても,可能な限りで判例,論文等を確認した。調査を通じて,基本的には効力を認め例外的に公序により制限する立場,立法により荷主保護のため効力を制限する立場,少なくとも表向きは合意の欠如を理由として効力を制限する立場があることは,概ね再確認できた。 具体的な業績としては,「ロッテルダム・ルールズ―国際海上物品運送法の現在と未来」『国際経済法講座II 取引・財産・手続』(法律文化社,2012年)を公表した。これは,同条約成立の背景にあった運送法統一の状況や取引の現実を踏まえて,俯瞰的に条約の意義を検討したもので,今後の研究の基礎となる考察である。なお,執筆時期等との関係で本研究の業績としてはカウントしていないが,本研究のテーマに関して,本年はほかに判例評釈1件(ジュリスト1442号120頁),国際会議の議論の紹介を1件(海法会誌復刊56号103頁)を公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目にあたる本年は,広く文献の収集と検討を行い,検討の視点の妥当性を検討することを最大の目標としていた。この観点からは,研究実績の概要で示した通り,比較法的な検討を通じてある程度政策的な立場を整理できたことで,平成24年度については一応の成果を収められたものと考えている。このため,単年度でみれば,どちらかといえば「おおむね順調に進展している」状況にある。 しかし,他方で,各国の民事訴訟法,国際私法,実質法,取引実態にかかわるテーマについて,法政策的な観点から検討を行うことの難しさを改めて感じており,執筆作業は遅れ気味になっている。このため、単年度の目標との関係では合格点であるとしても,最終年度に目標を達成できるかという観点からは,やや遅れ気味と評価するのが妥当と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成24年度に行った文献研究を基礎に,いよいよ本格的に比較法的な検討を行いたいと考えている。現在のところ,最初に設定した検討の視点自体は概ね妥当であったと考えてはいる。ただし,平成24年度に行った調査により,各国の実質法上,手続法上の考え方の相違が船荷証券上の管轄合意の効力の問題に与えている影響が,当初予想していたよりもかなり大きいこともわかってきた。このため,現在までの検討を基に執筆を進めるとともに,並行して関連する諸制度の影響についても詰めていく必要があると考えている。 本研究の課題は国際的にも継続的かつ活発に取り上げられているテーマであるため,諸外国の議論の状況については,今後も注視していく。そのため,平成25年度も文献の収集と分析は積極的に行っていきたい。 また,本研究の目的には,単なる外国法紹介ではおわらせず,日本法への示唆を得ることも含まれる。このため,日本における実務の把握,外国の法状況との相違の見極めも必要になってくるものと考えられる。研究会等での報告のほかに,可能であれば実務家から意見を聴取する機会を得て,諸外国の議論から日本法にとってどのような示唆が得られるか,検討を試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(1 results)