2013 Fiscal Year Research-status Report
国際人権法上の社会権の実施措置の有効性確保に係る基礎研究:健康権を中心に
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24730039
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
棟居 徳子 金沢大学, 法学系, 准教授 (50449526)
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Keywords | 国際人権法 / 健康権 / 人権指標 / 人権の「司法アプローチ」 / 人権の「政策アプローチ」 |
Research Abstract |
本研究は、社会権保障のための実施措置の有効性確保を目的に、社会権の中でも最も司法審査が難しく、「司法アプローチ」による研究の発展が求められ、一方で「政策アプローチ」による研究が進んでいる健康権を題材に、「司法アプローチ」と「政策アプローチ」の双方から、必要な基礎研究、すなわち①健康権に関する国際判例データベースの作成と判例分析、及び②健康権の指標開発とそれに基づき各国のモニタリングを行うものである。 平成25年度は主に②の研究に焦点を当てて、次の研究成果を出した。まず、これまで進めてきた国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)における人権指標の開発及び活用に関する研究を論文にまとめ発表した。また、2013年に行われた社会権規約の第3回日本政府報告書審査において採択された総括所見を分析し、2013年11月に開催された国際人権法学会においてその結果を報告した。さらに、前年度に報告書の形で公表した日本における健康権のモニタリング調査の結果を分析して、日本における健康権の履行と課題について英文論文にまとめた。本論文は、海外の共同研究者らとの共同出版の形で2014年春以降に公表予定である。 その他、イングランド及びスコットランドの国内人権機関、英国保健省並びに英国の人権指標の理論的枠組みの構築に貢献した研究者を訪問し、国内における具体的な人権指標の活用例と効果的な活用のための理論的及び組織的な枠組の在り方と課題についてインタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記②の研究については、当初の予定通り進んでおり、国内及び国外への研究成果の発信もできている。 ①については、2013年に健康権に関する国際判例データベースが正式に開設されたことは大きな進歩であるものの、個人の研究の進捗状況としては、先述したように平成25年度は②の研究に焦点を当てて進めてきたため研究成果が出せなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
①については、国内の判例を国際判例データベースにアップあるいはホームページを作成して公表していくとともに、国際判例データベースに蓄積された各国の健康権に関連する判例を整理及び分析し、健康権に関する判例法理や審査基準を明らかにする。 ②については、これまでのモニタリング調査や研究成果を踏まえ、さらに対象者ごとに細分化した指標を用いて日本及び他の先進国における健康権の状況をより詳細に分析するとともに、社会権規約委員会の定期報告書審査における健康権に関する判断基準を明らかにする。 以上の研究については、論文及び学会報告等で国内外に発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年3月末の英国出張において、帰国日が4月1日となったため、帰路の航空券代を年度内に執行することができなかったため。 平成26年度の予算執行が可能になり次第、上記英国出張の帰路航空券代を執行する。
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