2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
加々美 康彦 中部大学, 国際関係学部, 准教授 (30449889)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際法 / 海洋法 / 海洋政策 / 島嶼 / 海洋保全生態学 |
Research Abstract |
本研究は主に生態系保全、資源開発、境界管理に係る法制等を対象として、島嶼国(部)の周辺海域における管理実行の研究を通じ、それらが現代海洋法秩序にいかなる影響を及ぼしているのかを特定し、「島嶼国際法」として体系化することを目的とする。 初年度である本年は、従来の国内外の先行研究及び申請者自身の過去の関連研究を今一度再点検し、また島嶼国(部)の管理に関する国内法・政策の情報収集、分析を目的とした。 その成果として、まず、茅根創(東大・サンゴ礁学)と共に「沖ノ鳥島の管理・利活用は国際公益の大義のもとに」『港湾』第89号では、海外のサンゴ礁の島嶼管理として海洋保護区を設ける例を手掛かりに、わが国の沖ノ鳥島の管理のあり方を検討した。つぎに、加々美康彦ほか(編著)『海洋保全生態学』(講談社)では、わが国初となる海洋保全生態学の専門書の編集を担当するとともに、「海洋保護区」に関する章の執筆を担当し、島嶼での実行を加味しつつ既存の(申請者の)海洋管理に関する研究を整理すると共に、海洋保護区に関する国際的動向を分析した。さらに、(社)海洋産業研究会から依頼を受けて実施した「国内外の遠隔離島の管理・利活用の現況と展望」と題する口頭発表においては、国際法上の島の地位がクローズアップされた国際司法裁判所での黒海境界画定事件を中心に、境界画定を要する島嶼の管理実行を分析した。同報告を基にして、論文「海洋基本法制定以後の離島管理関連法制の展開とその意義―もう一つの「島の制度」を求めて―」『貿易風(中部大学国際関係学部論集)』第8号では、従来の国内外の先行研究及び申請者自身の過去の関連研究を今一度再点検し、情報のアップデートを盛り込んだ上で、わが国の海洋基本計画の基で進められている島嶼管理が、海洋法条約の描けなかった「もう一つの『島の制度』を模索する試みであるとの評価を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の本年は、3つの点について研究を進める目的を立てた。すなわち、①島をめぐる国際法に関する先行研究の再点検、②申請者の過去の研究を土台に、国内的・地域的・国際的実行のアップデート、及び③島嶼及び周辺海域における生態系保全の管理実行の文献調査である。 ①については、ここ数年、この分野の研究成果が内外で多く発表されており、本年はその情報収集に力を入れた。それらを網羅的に分析できたわけではないが、主要な動向は掴むことができたと考える。②については、本年度に作成した諸論文及び講演を通じて、一定の整理を進めることができたと考える。また、その成果の一部は、(12年度末に改訂が予定された)海洋基本計画の作成担当部局(内閣官房総合海洋政策本部)に持参し、島嶼問題の担当官に手交、さらに大陸棚問題の担当官らと意見交換を行うことができた。このように、本研究の目標とする政策面での貢献にも一定の成果を得ることができたと考える。③については、隣接諸分野における文献収集を進めた。但し、入手予定の一部文献が、発行機関の深刻な不手際により年度内に入手不能という事態が発生した。また、自然科学分野に横断する文献を含むために、必ずしも十分な把握ができているわけではないという問題もある。以上より、③についてはやや進捗が遅れている。 とはいえ、初年度として、複数の業績を公表することができ、ほぼ所定の目的を達したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、全体として研究計画の見直しの必要は生じておらず、また特段の研究遂行上の課題も存在しないので、次年度も当初の計画通りに進めていくこととしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度において、入手を予定していた文献(International Journal of Island Affairs: INSULA)が、発行機関の深刻な不手際により、2012年11月末に購入契約をしたにも拘わらず年度内に入手できなかったという事故が発生したため、次年度に請求する研究費が生じた。現時点でも依然未入手の状況にあるため、引き続きその入手に努めている。ただし、繰り越した研究費用が全体の研究費に占める割合はわずかであるため、その額を次年度において島嶼関係の文献収集の費用として使用したいと考える。また、この事故が本研究の遂行全体に与える影響は大きくないので、次年度以降も計画通りの支出を進めていくこととしたい。
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Research Products
(3 results)