2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
山内 由梨佳 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 人文社会科学群, 講師 (80582890)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際法 / 国際刑法 |
Research Abstract |
本研究は、金融法の域外適用の根拠を国際法学の観点から分析・検証し、国際的な金融法上の規制のあり方について理論的基盤を提供することを目的とするものである。本研究は欧州が実施主義を積極的に導入し始めた1990年代以降の国家実行を中心として、米国、欧州、日本における国家実行を実証的に分析し、その射程を明らかにすることを狙いとしていた。そのため、本研究は(1)米国、欧州、金融法規制を行っている主要なEU加盟国(英、仏、独、西)、中国、日本における金融法違反行為の国際的規制の実行を丹念に追うことによって、その域外適用がどのような根拠に基づいてなされているのか、どのような機能を果たしているのかを明らかにすることを試みた。 申請研究期間の1年目は、各国の金融法の実証研究を行った。そのために各国法令の制定過程、その趣旨目的、制定を主導した国内の政治動態や社会的背景、制定後の運用過程、実施のメカニズム等を、一次資料と有益な二次資料を中心にして調査した。米国に関しては、金融法の基礎が構築された1930年代から遡って、主要な実行を追った。特に、米国で確立された金融法の適用の制約基準は、その後欧州や日本に継承されていることから、理論的な分析も含めて、包括的な検討を行った。欧州に関しては、主として欧州連合(EU)における実行が重要である。とりわけ、2008年のリーマンショック以降は域内の規制を強化する方向で立法が進められている。この場合はEU法上の別途の考慮が必要となる。 現時点では、その制定経緯や各国の社会状況は当然のことながらそれぞれ異なるものの、金融法の域外適用の基準は国ごとに大きく異なるわけではないという暫定的な結論が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究の目的は、金融犯罪を規律する手続法を域外的に執行する際の国際法上の根拠を、実証的に分析することであった。国際法上、他国領域内における法執行は、当該領域国の同意がない限り違法である。しかし金融法領域においては対象となる企業や私人が域外に所在していても、当該企業らに国内手続法の遵守を強制し、違反した場合に公的制裁を科す国家実行が見られる。本研究は金融犯罪の特殊性を踏まえながら、そのような実行の妥当性を国際法学の観点から検証する。なお、本研究において、金融犯罪とは、金融活動を規制する法(証券法、租税法、外国公務員贈賄禁止法、資金洗浄罪規制法等)の違反であって刑事上の制裁が科されるものを指す。 今年度は、上記の研究実績の欄で詳述したように、証券法、租税法についての各国国内法の調査を行うことができた。研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。 ただし、目標としていた金融法の基礎理論の検証は、まだ完全には終わっていない。申請者は既に、経済犯罪規制の国際法学上の位置づけについては、丹念な考察を展開した。その一部は公刊しているし、その総括は博士論文として完成させることができた。本研究ではその成果を発展させる形で、経済犯罪一般とは区別される金融犯罪の特殊性に着目して、先行研究を分析していくことを狙いとしていた。 金融法は行政法的側面と刑事法的側面を併せ持っているが、国際法体系において行政法と刑事法のいずれも属地主義に基づいた運用がなされてきた。そこで金融犯罪の国際的規制がいかなる固有の法構造を有するかという点に着目して、各国行政法学と刑事法学からの検討を行うことが当初の計画であった。現時点では必要な文献は入手し、その精読も開始しているものの、それを纏める作業は完結していない。今後の作業の中で進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、積み残した理論研究を行うことが今年度の課題となる。 また、今年度は日本における金融法のあり方について、国際法学の観点から分析することに力点を置く。方法としては、まず日本の金融商品取引法(証券取引法)、外国公務員贈賄罪を定める不正競争防止法、資金洗浄罪を定める組織犯罪防止法、租税関連法、及び、そのガイドライン、事例、判例、関連省庁の報告書を手掛かりにして、欧米と比較した際の固有性を明らかにする。加えて、日本は米国、カナダ、EU等と金融規制に関して一定の司法共助を行う旨の国際協力協定を締結している。そこでその運用のあり方についても併せて調査する。これらを踏まえて、日本の金融法の特殊性がどのように理解されるべきであるか内在的に分析する。これらの資料収集は、オンラインデータベース、国立国会図書館、各大学の図書館等において行う。 また、今年度6月には、申請者が所属する国際刑法学会が主催する、企業犯罪責任に関するシンポジウム(Corporate Criminal Liability - AIDP/LMU-Symposium、於・ドイツ、ミュンヘン)で報告する予定である。このシンポジウムは、国際法のみならず刑法、比較法、社会学、心理学など幅広い分野から企業犯罪にアプローチすることを狙いとしており、今後の研究を進めるにあたって多いに有益となることが期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として文献資料、及び、旅費に充てる予定である。旅費は上記のミュンヘンで行われるシンポジウム出席、及び、11月においてインド・デリーで開催されるアジア国際法学会に出席する目的において使用する。
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Research Products
(1 results)