2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730041
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
山内 由梨佳 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 講師 (80582890)
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Keywords | 国際公法 / 刑法 / 経済犯罪 / 金融犯罪 / 管轄権の域外適用 / 司法共助 |
Research Abstract |
2年目の平成25年度は、本研究では経済犯罪一般とは区別される金融犯罪の特殊性に着目して、先行研究を分析していく作業を丹念に行った。とりわけ、申請者は本研究の主題と国際行政法学が密接な関連性を有することに着目し、国際行政法の業績を集め、その整理を試みた。 金融法は行政法的側面と刑事法的側面を併せ持っているが、国際法体系において行政法と刑事法のいずれも属地主義に基づいた運用がなされてきた。そこで金融犯罪の国際的規制がいかなる固有の法構造を有するかという点に着目して、各国行政法学と刑事法学からの検討を行う。これらの作業を踏まえた上で、金融法、行政法、国内刑法における研究の蓄積と国際法学におけるそれを比較対照し、前者の成果をいかに国際刑事法学に応用することができるかについて検討した。 また今年度は、平成24年度の研究成果を踏まえて、日本における金融法のあり方について、国際法学の観点から分析することに力点を置いた。 方法としては、まず日本の金融商品取引法、外国公務員贈賄罪を定める不正競争防止法、資金洗浄罪を定める組織犯罪防止法、租税関連法、及び、そのガイドライン、事例、判例、関連省庁の報告書を手掛かりにして、欧米と比較した際の固有性を明らかにすることを試みた。加えて、日本は米国、カナダ、EU等と金融規制に関して一定の司法共助を行う旨の国際協力協定を締結している。そこでその運用のあり方についても併せて調査した。これらを踏まえて、日本の金融法の特殊性がどのように理解されるべきであるか内在的に分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、金融犯罪を規律する手続法を域外的に執行する際の国際法上の根拠を、実証的に分析することを目的とするものであった。国際法上、他国領域内における法執行は、当該領域国の同意がない限り違法である。本研究は金融犯罪の特殊性を踏まえながら、そのような実行の妥当性を国際法学の観点から検証することを予定していた。 上記のように、研究期間中に行うことを計画していた主要な資料収集は十分に出来たと考えているし、それに基づいた理論的な分析も、ある程度行うことができた。 もっとも、平成25年度の最後の3ヶ月は、論文の公刊を計画の中に入れていた。具体的には、これまでの研究成果を総括し、公刊するための論文執筆に当て、また、各種の研究会やワークショップ、学会などにおいて、本研究の成果を公表していくことを予定していた。 しかし、作業量が多いこともあり、公刊のプロセスはやや遅れている。この点は、平成26年度中に克服することを目標としている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は平成24―25年度の2年間のプロジェクトであったが、概ね順調に進めることが出来たため、公刊のプロセスが終わった後には、次のような関連領域に関心を払って研究を推進していくことを計画している。 まず、本研究では、金融犯罪を規律する法の域外適用を主題としたが、私法あるいは行政法としての金融法の執行についても更に検討する余地が大きく残されている。実行においては刑事罰を伴わずに法執行が行われることが多く、それらにおいて国際公法がどのように関わっているのかを評価する作業は意義のある営みといえる。 それから、本研究では法の域外適用を検討するに当たって主に国家主権の側面に力点を置いて分析したが、人権法の位置付けについて十分な検討を行うことができなかった。実際には、私法あるいは行政法の手続きで得られた情報を刑事手続において用いることができるかという問題が大きく残されている。 今後は、これらの課題に注意を払いながら、より包括的な研究を進めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に非常に有益だと考えられる書籍の出版が平成26年4~9月にあるという情報を得たたため、その書籍の購入をするために平成26年度の使用額を予定した。 上記書籍の購入に充てる予定である。
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