2012 Fiscal Year Research-status Report
課徴金制度の現代的課題とこれを克服する理論枠組みに関する総合的研究
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24730049
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
伊永 大輔 広島修道大学, その他の研究科, 准教授 (10610537)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 経済法 / 独占禁止法 / 課徴金 / 制裁金 |
Research Abstract |
本研究は、独占禁止法における課徴金制度の具体的制度設計に関する総合的検討を行うことを目的とするものであり、これに基づく2012年度の研究成果の一つである「シェアカルテルの競争制限効果と対価要件該当性―ダクタイル鋳鉄管事件」ジュリスト1439号111~114頁では、東京高裁判決の評釈において課徴金賦課の条文解釈を具体的に検討している。また、「優越的地位濫用における実務的課題」ジュリスト1442号16~32頁(2012)においては、優越的地位の濫用の課徴金算定の問題を第一線の研究者・弁護士とともに議論しており、最前線の議論として当該分野の研究に大きく貢献している。 また、3月には欧州に出張して競争法専門の研究者・弁護士らに対し、EUが公表しているガイドライン等ではわからないEU制裁金の実際の算定基準についての裁判例や学説の議論状況をヒアリングするとともに、日本の独占禁止法において問題となっている課徴金にかかる論点について、法解釈に関するディスカッションを行った。これらの議論の成果は、取りまとめた上で2013年6月に研究報告として発表することとなっており、その後、学術誌(「法学研究」を予定)に掲載される予定である。 その他、多くの研究会等で最新の情報に触れ、議論を重ねてきた結果、課徴金対象となる規制の趣旨・射程がはっきりし、本研究を進めていく上でも非常に有意義な示唆を得たことも多かった。これらの示唆は、課徴金制度の研究に直接反映されるものではないかもしれないが、独禁法の規制全体の中でどのように課徴金制度が機能し、解釈されることが期待し、要求されているかを考慮すれば、間接的には本研究にも還元・寄与し得るものであった。このような独占禁止法に係る一般的な研究活動や最新の議論状況の把握を継続することも、本研究における重要な研究実績の一つとして考えていることを記しておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度に公表した論稿として、「シェアカルテルの競争制限効果と対価要件該当性―ダクタイル鋳鉄管事件」ジュリスト1439号111~114頁では、東京高裁判決の評釈において課徴金賦課の条文解釈を検討し、「優越的地位濫用における実務的課題」ジュリスト1442号16~32頁(2012)においては、優越的地位の濫用の課徴金算定の問題を実務家らとともに議論している。 また、3月には欧州に出張して競争法専門の研究者・弁護士らに対し、EUが公表しているガイドライン等ではわからないEU制裁金の実際の算定基準についての裁判例や学説の議論状況をヒアリングするとともに、日本の独占禁止法において問題となっている課徴金にかかる論点について、法解釈に関するディスカッションを行った。これらの議論の成果は、取りまとめた上で2013年6月に研究報告として発表することとなっており、その後、学術誌(「法学研究」を予定)に掲載される予定である。 この1年、様々な研究会で情報収集を行うとともに、研究内容について議論や発表の場を極力見つけてきた結果、研究成果の発表の場にも恵まれて順調に研究は進展してきている。ただし、本研究の射程は広範囲に及ぶものであるため、1年間の充実した研究活動を通しても、全体としてはごく一部の解明がなされたに過ぎないともいえる。その意味で、研究目的の達成度合いについては、(非常に順調に進展してきているといえるものの)「おおむね」順調だと表現することになろう。
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Strategy for Future Research Activity |
先ずは、3月に行った欧州出張での研究成果について、文献等をレヴューし直して論稿として取りまとめ、研究報告を行うことを優先していきたい。その上で、研究成果については学術誌に公刊する予定である。 また、欧州委員会における制裁金算定基準を明らかにすることは、あくまでも我が国独占禁止法上の課徴金制度の問題点解決につながることから本研究の対象とされていたことに留意する必要がある。この観点からは、我が国における課徴金に関する判決・審決や各種文献を適切に分析し、課徴金制度の趣旨や位相を明確にする作業を通して、EUにおける制裁金制度との異同を踏まえて論じる必要がある。 したがって、2013年度の研究としては、上記課徴金制度の趣旨及び位相を明らかにすることに注力していきたい。この点は、最近公表された公正取引委員会の審決(審判審決平成24年9月25日)でも中心的な問題とされており、この審決取消訴訟の東京高裁判決も6月頃には出されるようなので、これらをフォローして研究内容に取り込み、また、積極的に研究成果として公表することにより、研究者・実務家の批評やコメントを踏まえて本研究の具体的内容を更に進展させていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度についても、最新の情報に触れ、他の研究者と議論を行うために、出張旅費として使用する部分が大半となることが予想される(例えば、東京経済法研究会、関西経済法研究会、外国競争法事例研究会などへの出席・研究報告)。また、EUにおける制裁金についての最新の情報を得るため、外国後文献を購入することも優先したい。その他、必要に応じて、研究成果を周知したり、他の研究者・実務家・有識者等と十分な議論を行うことができるようにするための経費として適切に用いる予定である。
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