2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
緑 大輔 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (50389053)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 対物的強制処分 / デジタル証拠 / 妨害排除措置 / 令状主義 / 強制処分法定主義 |
Research Abstract |
今年度は、本研究テーマにかかわるものとして、(1)刑事訴訟法上の基本原則(令状主義、強制処分法定主義)にかかわる基礎的な研究を行うとともに、(2)2011年刑事訴訟法改正で今後生じうる解釈論上の問題の所在を調査した。 前記(1)にかかわる内容としては、第一に、捜査を行う際の要件とされる「必要性」の意味を分析した。捜査機関が殊更に強制処分を行う必要性を作出することで、不必要な権利制約を行う事態を回避するために、「必要性」を判断する際には当該捜査行為に至る経緯にも着目すべきであり、分析の際には時間幅を広げる必要がありうることを提案した。第二に、強制処分法定主義とのかかわりで、対物的強制処分を執行する際の「必要な処分」として許される措置の範囲を検討した。第三に、対物的強制処分の効力について、特に複数の者が被処分者である場合の効力範囲を明確にするために、携帯電話会社の保有するGPS情報や架電状況にかかわる情報の扱いなどを含めて、いくつかの事例をもとに研究・報告を行った。第四に、令状主義や強制処分法定主義といった刑事訴訟法上の基本原則・諸概念を分析した現時点での成果を、学習者向けに咀嚼して著す作業を行った。 前記(2)にかかわる内容としては、2011年改正によってデジタル証拠の収集・保全のための条項が数多く設けられた背景を分析し、それが「強制処分法定主義」の要請というよりは、プロバイダー事業者が個人情報を捜査機関に開示することについて民事法上の免責を明確にする趣旨によることを確認するとともに、当該強制処分を執行する際に生じるだろう諸論点について整理し、今後の研究の前提作業を行うとともに、それを報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、(1)サイバー空間の権利論にかかわる資料を収集するとともに、(2)伝統的な対物的強制処分に関する基礎理論の研究を実施することが、計画上は主要な目標であった。 前記(1)については、和書・洋書ともに資料収集を実施し、Wayne R. LaFave, Search and Seizure vol.1-6 (West Group)やOrin S. Kerr, Computer Crime Law (West Group)など資料的価値の高い諸文献を数多く収集するとともに、分析のために必要な機器の整備を一定程度行うことができた。特にKerrの文献は、事例研究の出発点として有意義なものであり、今後の研究の出発点となりうるものと思料され、次年度以降の研究の基盤を一定程度形成することができた。 前記(2)については、北大刑事法研究会、一橋大学刑事判例研究会、刑事司法研究会、刑事立法研究会、刑事法合同研究会、札幌法と心理研究会といった各所で捜査法に精通する研究者・捜査実務家と意見交換を重ねる機会を得るとともに、「研究実績の概要」で触れたように、研究報告を行うこともできた。これら報告のうち、いくつかの成果は平成25年度に発表する準備を進めており、研究計画に照らして極めて順調に作業が進捗しているものと考える。 他方で、アメリカ合衆国の研究者との人的ネットワークを構築するための準備は、文献収集や研究会参加等で予算を全額費消したことやその他の事情により、必ずしも充分に進捗していない。以上の事情を総合的に考慮して、「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に研究計画にしたがって研究を遂行できているため、今後も基本的には研究計画にしたがって研究を継続する予定である。但し、アメリカ合衆国への渡航を行って現地の研究者にインタビューを行う点について、平成24年度に人的ネットワークの構築の拠点として協力を想定していたものの、協力者側の事情もあって協力を仰ぐことが困難になるなど、その前提が当初の予定と異なる状況になりつつある。そのため、研究計画上、次善の方策として挙げていたものであるが、国内の英米法研究者で捜査法やプライバシー概念等に精通する者との意見交換の機会を積極的に設ける方向で対応することも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ当初の予定通り使用したが、発注済みの洋書の入荷が遅れたため、多少の残余が生じている。当該書籍が入荷次第、これの支払いに充てる予定である。
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Research Products
(7 results)