2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730050
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
緑 大輔 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (50389053)
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Keywords | 対物的強制処分 / 令状主義 / 強制処分法定主義 / 効力範囲 / プライバシー / 監視型捜査 |
Research Abstract |
今年度は、本研究テーマにかかわるものとして、前年度に引き続き、(1)刑事訴訟法上の基本原則(令状主義、強制処分法定主義)の研究を行うとともに、(2)対物的強制処分の規律にあり方について、新しい捜査手法を例として、公法等関連領域との関係をも視野に入れて分析した。 前記(1)としては、第一に、対物的強制処分において裁判官が発付する令状の効力範囲を検討した。そこでは、被処分者とは異なるプライバシーの主体(第三者)が現場に居合わせた場合で、当該第三者が捜索差押令状の効力を帯びている差押対象物を隠匿した蓋然性がある場合には、捜索差押令状の追及効が当該第三者の所持品・身体にも及びうるという論理を検討した。その上で、刑訴法112条(出入禁止措置)が、現場に居合わせた者の負担の受忍を想定した条項であり、それが追及効の範囲を限界付ける機能をも有する旨を主張した。これは、サイバー空間における第三者の位置付けやその要保護性を検討する基礎たりうる。第二に、強制処分法定主義に関して、対物的強制処分を執行する際の「必要な処分」として許される措置の限界を検討した。第三に、令状主義や強制処分法定主義を分析した現時点での成果や、判例の動向を学習者・実務家向けに咀嚼して著す作業を行った。 前記(2)としては、法制審議会で議論の対象となっている、通信傍受・会話傍受の立法動向について分析を加えた。通信傍受については、サイバー技術を用いて捜査手法を更に効率化する提案がなされており、それが捜査手法に対する法的な規律の密度にかかわることを指摘した。そして、より記述的な執行態様にかかわる明文規定を設けることを提案した。また、GPS監視などサイバー技術による監視型捜査の法的規律について、プライバシーの要保護性を中心に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、(1)サイバー空間における令状主義の保護範囲の理論的解明、(2)強制処分法定主義の規律密度についての理論的解明、(3)実体刑法が訴訟法の立法・解釈に与える影響の理論的解明である。 (1)については、既に研究業績を発表しつつあり、GPS装置などの監視技術・サイバー技術を活用した捜査手法におけるプライバシーの要保護性の検討を残すのみである。この点についても、更にアメリカの判例(Jones v. Unites States)等を参照しつつ、平成26年度に向けた調査・研究も進めているところであり、非常に順調に進展している。 (2)についても、同様に既に研究業績を発表しつつあり、日本の判例の分析および現在進行中の通信傍受・会話傍受などの対物的強制処分についての立法作業の過程を分析することで、規律密度について検討を進めている。当初の研究計画では、2011年刑訴法改正を素材とする予定であったが、現在も新たな改正作業が進められており、その作業が本研究目的にかかわるものである以上、併せて検討することは合理的であり、順調に進展している(後述する「今後の研究の推進方策」参照)。 しかしながら、(3)については、なお充分な検討を加え切れていない。以上の事情を総合的に考慮して、「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に研究計画にしたがって研究を遂行できているため、今後も基本的には研究計画にしたがって研究を継続する予定である。但し、研究計画の時点とは異なり、法制審議会「新時代の刑事司法特別部会」が、新たな刑事訴訟法改正について検討するに至り、そこでは対物的強制処分も検討対象となっている以上、本研究もその影響を免れ得ない。そのため、研究目的(3)にある「実体刑法が訴訟法の立法・解釈に与える影響の理論的解明」については、その対象を縮小し、研究目的(1)(2)を更に深く追究する必要性が高まっていると思料する。以上のことから、平成26年度は研究目的(1)(2)に重点を置くことを継続することを考えている。 また、研究計画上、海外渡航に代わる次善の方策として挙げていたものであるが、国内の英米法研究者で捜査法やプライバシー概念等に精通する者との意見交換の機会を積極的に設ける方向で研究を推進している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費に18,648円の残額が発生したが、これは洋書の納品時期に伴うものであり、次年度に支払う予定のものである。 したがって、この繰り越し分については、洋書購入に充当する。
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Research Products
(8 results)