2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24730050
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
緑 大輔 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (50389053)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 強制処分 / 強制処分法定主義 / 令状主義 / デジタル証拠 / 監視型捜査 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、デジタル情報を帯びた証拠の収集に対する法的規律の在り方について分析を行ってきた。その過程で、デジタル証拠の特性が、コストを要さずに膨大な情報量を容易に収集できる点にあることを見出した。そして、その特性がもっとも凝縮して現れる捜査の態様が、GPS位置情報の収集と、ネットワークにあるクラウドにそれら情報が蓄積されることを通じて対象者の動静を網羅的に把握する、いわゆる「監視型捜査」にあると考えた。 そこで、デジタル証拠収集の法的規律の素材として、監視型捜査に焦点を当てて研究を実施した。アメリカ連邦最高裁は、United States v. Jones判決において、令状主義による規律を要求したが、そこでは立法による制禦が望ましいとされつつも、暫定的に裁判官が令状主義を通じて制禦するという考え方が示されていた。その実質的な含意は、令状により収集・蓄積される情報量の上限を設定することによって、規律を行おうという戦略である。しかしながら、個々の裁判官が、予めルールを設定されていない状況の下で、令状審査によって人の動静の監視の要否を判定することは容易とはいえず、プライバシーの要保護性の判断も困難を伴う。 他方で、強制処分法定主義における規律対象と規律の密度について研究を行い、重要な権利利益の制約を伴わない場合であっても、強制処分に付随する措置や政策的に利益を保護し、捜査機関の権限の濫用を防ぐために、明文規定を設ける必要がある場合もあるとの考えを採った。その上で、日本では強制処分として位置づけて法定を要求するか、「法の支配」理念の下で政策的に情報プライバシーの保護のために法定を要求するかのいずれかの論理を通じて、デジタル情報を用いた監視型捜査に対する明文規定によるルールの設定が必要であるとの考えを示した。
|