2012 Fiscal Year Research-status Report
ドメスティック・バイオレンス対策における被害者・加害者のケアと刑罰の役割
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24730051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
宿谷 晃弘 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80386531)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | DV / ドメスティック・バイオレンス / 刑罰 / 修復的正義・修復的司法 / ケア / 被害者 / 関係性 / 災害 |
Research Abstract |
当該年度においては、DV、刑罰、修復的正義・司法、暴力防止、被害者・加害者のケアないし支援等の学説・制度・プログラム等の内容・歴史・実態等を調べるために、文献調査およびインタヴュー調査(国内および国外)を行い、DV被害・加害の実態、刑罰の理念・思想・制度の変遷、刑罰がDV被害者・加害者に与える影響、刑罰以外のDV対策方法の理念・制度・プログラム等の効果等について、以下のような知見を得ることができた。 それは、つまり、まず第一に、当研究の当初の仮説の通り、DV対策には、教育等の、刑罰以外の制度やプログラムの充実が不可欠であるということであり、仮に刑罰を用いるとしても、民間において培われた技術や知見等を活用する必要があるということである。刑罰の理念および制度に関する調査による成果が示すように、我が国の刑罰システムは、民間の実践によって新たな方向性を獲得し、改善されてきた。ところが、今日においては、このことの意義が見失われている部分もなきにしもあらずのように思われる。しかしながら、DV被害・加害のケアにおいては、後述の通り、被害者・加害者双方の地域的な特性を最大限に考慮する必要があるのであり、ここには民間の活力を利用する必要があると考えられる。また、これに関連して、第二に、インタヴュー調査を通じて、DV被害・加害への支援・対処は、地域における特性を最大限に考慮する必要があり、たとえば、ただ単に相談窓口を設けるなどでは、被害の全容を把握することはできず、また被害が発覚した場合に有効な対処をなすことができないことが明らかとなった。このことは、例えば、濃密なジェンダー秩序に背景としたDVの発生が見られる農村部などにおいて顕著であるように思われる。 以上、当該年度の研究成果は、DV対策・支援における、地域的な特性を踏まえた上での方策の開発に一定の貢献をなすことができるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成度に関する上記の評価を行った理由は次の通りである。 ①明治期からの刑罰の理念・制度・機能・歴史等の文献を精査し、刑罰が被害者・加害者のケアに対して、一般的にどのような機能をもち、また我が国においてどのような機能を果たしてきたかについて明らかにできてきたため、かつ、②刑罰に関連して、公的システムだけでなく、民間の実践がもつ意義について、とくに留岡幸助などの歴史的研究を通じて、その端緒を明らかにすることができたため。 そして、これらの作業を踏まえた上で、③DV対策における刑罰の役割等について思索を深めることができたため。 さらに、④DVおよび犯罪・非行に関する民間および国外(韓国)のプログラム等を調査し、その内容・実態等を把握し、かつ、⑤DV支援における地域的特性の重要性について考察を深めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関して、基本的にこれまでの作業を継続し、研究の、より一層の精緻化を図る予定である。具体的には、以下のような方策にて推進することにする。 まず、①【文献調査の継続】:DV対策・支援等および刑罰等に関する文献調査を引き続き行い、DV対策・支援等の理念・制度・実践等および刑罰の理念・制度・実態等をより明確にしていく。 次に、②【インタヴュー調査の継続】:国内外における、DV被害者・加害者支援および刑罰に関する理念・制度・実態・歴史等の調査を継続し、とくに地域的な特性についてどのように対処していくか等についての知見の深化を図る。 次に、③【研究成果のとりまとめ】:これまで行ってきた作業の成果について、再検討の作業等を加速化するために、より意識的なとりまとめを行う。 そして、【研究経過の報告およびそれを通じての研究成果の再検討・精緻化の継続】:国内外の研究会、学会等における報告、および紀要等への論文発表、著書の執筆等を通じて、研究成果を広く公表し、研究者や実践家等との議論を通じて、研究成果の再検討および一層の精緻化、補充的な調査の必要性の検討等を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度については、次の3つの柱を中心に研究費を使用していく予定である。 まず、①文献調査のための文献等の購入。 次に、②インタヴュー調査のための旅費・謝金・通信費等の支払い、および必要とされる機材・文具等の購入。 そして、③研究成果のとりまとめ、公表のための旅費・謝金・通信費等の支払い、および必要とされる機材・文具等の購入。
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Research Products
(5 results)