2012 Fiscal Year Research-status Report
特別刑法の明確性――罪刑法定主義の適用領域と解釈の明確性を中心に
Project/Area Number |
24730056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
品田 智史 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60542107)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 刑法 / 特別刑法 / 経済刑法 / 罪刑法定主義 / 金融商品取引法 |
Research Abstract |
本研究では、罪刑法定主義とその趣旨の適用領域を確定し、刑罰法規とその解釈の明確性に関する基準を呈示することによって、特別刑法によって処罰される領域を明確にすることを目的とする。 1.本年度は、研究計画に基づき、明確性の原則を含む罪刑法定主義について研究を行った。いわゆる明確性の原則(刑罰法規の明確性)は、法文自体の明確性と、法文の解釈の明確性の2つの意味で用いられている。このうち、憲法上の原則として順守されるべきなのは前者のみであり、後者は、いわゆる合憲限定解釈が求められる場面でなければ、絶対的な原則ではなく、解釈の合理性の1つの判断基準として、他の要素と相関的に判断の対象となるものと解される。学説上用いられる「罪刑法定主義の趣旨」もそのように解することが可能であり、また、法文の明確性の問題についての裁判実務の緩やかな理解に照らしても、解釈の合理性のなかで明確性を検討していくことが今後有用であるものと思われる。以上の内容は、「特別刑法と罪刑法定主義――粉飾決算事例を素材として――」浅田和茂ほか編『刑事法理論の探求と発見』(成文堂、2012年12月)29~48頁」において公表されているが、比較法的視点を含めたより詳細な検討成果を公表することも予定している。 2.また、次年度以降の本格的な比較法研究のために、ドイツの刑法、刑事訴訟法、憲法についても研究を行った。刑事訴訟法、憲法については、今後の比較法研究のために必要な日独の違いなどといった前提を確認した。加えて、刑法については、近時、詐欺罪などのような伝統的な犯罪類型においても、その明確性について判断した憲法裁判所の判例が登場しているなど、明確性の議論がさらに活発になっていることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の研究実績にあるように、平成24年度の実施計画に記載していた内容は、おおむね達成できている。一部については、研究成果を論文の形で公表することもできた。他方で、比較法研究の対象が広いため、本年度で終了することはできず、また、具体的な特別刑罰法規の検討にと取り掛かることはできなかったため、(1)と評価することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、研究計画どおりに研究を進める。第一に、昨年度に引き続きドイツ法の調査を進め、そこで得られた知見をもとに日本における解釈の明確性の意義、具体的な判断基準などについて検討を行う。なお、今年度の秋から1年間ほど、ドイツにおいて長期在外研究をする機会を得られた。そのため、ドイツにおける明確性の原則の議論状況についてより詳細な調査ができると思われる。また、ドイツの経済活動においてどのような問題があるのか、および、どのような行為が事件化されているのかということを現地で調査することによって、ドイツの経済刑法において、実際にどのような解釈・運用が行われているのかを知ることも可能となり、この点も研究に役立つと思われる。 その後、我が国の実際の特別刑罰法規について以上で得られた知見をもとに検証を行う予定であるが、金融商品取引法を取り扱うことを予定している。そのため、ドイツ法の研究と並行して、金融商品取引法の罰則について、現在までの議論状況を確認することも行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)