2013 Fiscal Year Annual Research Report
司法と福祉の連携における社会復帰概念の明確化と適正な量刑手続に関する比較法的研究
Project/Area Number |
24730061
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森久 智江 立命館大学, 法学部, 准教授 (40507969)
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Keywords | 社会復帰 / 司法と福祉の連携 / 地域生活定着支援センター / 犯罪原因への対応 / 司法ソーシャルワーク |
Research Abstract |
前期は、国内において資料を基に、現地で行うべき研究課題の整理を行った。近年、多様な領域での制度改革が進んでいる同州において、従来の実務的積み重ねがどう整理され、どう変更されつつあるのかを知る必要性を確認した。また司法と福祉の連携にかかる実務との知の共有を目的として、大阪府地域生活定着支援センターを受託している「よりそいネットおおさか」での講演及び共同研究会の開催、部落解放・人権夏期講座での講演を行った。前者は福祉専門職との対話、後者は専門家と一般市民を対象にしていたが、従来は十分に意識されていなかった問題を共有し、今後、どのような解決の方向性が必要であるのかについて、一定の合意が見られたものと思われる。 後期は、ビクトリア州・メルボルン大学を拠点に、日本国内において十分に知ることのできなかった同州における司法と福祉の連携状況について、実際に各機関・施設の調査訪問や日本で入手できなかった文献の調査、司法や福祉にかかわる現地研究者・実務家との意見交換等を行うことにより、研究を深化させることができた。現在の同州においては、全体的な政策として、性犯罪者への対応を中心に厳罰化(制裁賦課における権利制約的介入の強化)が進む傾向にあるが、犯罪行為者全体に対する対応としては、より犯罪原因への対応を中心としたアプローチが依然として促進されており、その実質には、多分に支援的かつ本人の生活再建とその質の向上を目指すものも含まれている。一方で、福祉の領域では、本来であればもはや司法的(刑罰的)対応として位置付けるべきものと思われる措置も採られており、制度的には福祉としての独立性が動揺しつつあることが判った。 本研究を通して、「社会復帰」として目指されるべきものが、政策レベルと実際の実務において実効的な支援との間で明らかな乖離があり、その齟齬を埋めるための説明原理に苦慮する実態が明らかとなった。
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Research Products
(9 results)