2012 Fiscal Year Research-status Report
作為同価値性を持たない不作為犯の規範構造――機能的不作為犯論の構築に向けて
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24730062
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
松尾 誠紀 関西学院大学, 法学部, 准教授 (00399784)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 不作為犯 |
Research Abstract |
本研究課題は、法益危殆化状況における救助促進システムとして不作為犯論を機能的に再構築するという最終目標を達成するために、まず、不真正不作為犯とは異なり、作為同価値性を持たない不作為犯の低い違法性を基礎づける規範構造を徹底的に解明することを目的としている。従前の学説は不真正不作為犯ばかりに注目し、不作為犯全体を包括的に捉える視点を持っておらず、それゆえ、作為同価値性のない不作為犯との規範構造の相違すら明らかにできていないからである。本研究目的の達成のためには、第一に、保護責任者遺棄(致死)罪に関する検討、第二に、道路交通法上の救護義務違反の罪(道交法72条1項、117条)の検討、第三に、不救助罪(ドイツ刑法323条c等)に関する検討が必要である。平成24年度においてはこれら三つの検討課題に関する徹底したインプットの作業に取り組んだ。その研究成果として、不作為犯論の基礎となる構成要件的結果の帰責に関する論考を発表したほか、特に第三の課題に関し、ドイツでの現地調査・研究の実施を通して、ドイツ刑法における不救助罪に関する本質的理解を得た。不救助罪における本質はSolidaritaetであり、それに対する正確な理解は未だ不救助罪の理解が不十分であるわが国において極めて重要である。第三の課題に関する成果については近日中に具体的な形にして発表したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的の達成のため、平成24年度において取り組むべき作業は、次の検討課題に関する徹底したインプットであった。第一に、保護責任者遺棄(致死)罪に関する検討、第二に、道路交通法上の救護義務違反の罪(道交法72条1項、117条)の検討、第三に、不救助罪(ドイツ刑法323条c等)に関する検討である。その検討作業に必要な資料の収集も滞りなく実行できたし、それに対する調査・検討も問題なく取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においても、引き続き文献資料・判例資料の収集・検討を行い、平成24年度において個々の検討課題とした3つの検討課題に関する基礎的研究を継続する。他方、それと並行して、3つの検討課題に関する各検討結果を統合させ、作為同価値性のない不作為犯の規範構造に関する詳細な基礎づけに向けた研究を本格化させる。同年度前期には、学外の研究者を招いた複数の研究会を開いて研究成果の中間報告をし議論する。同年度後期は最終的な研究成果へ向けたまとめの作業に集中する。後期中頃には、特に不作為犯論の有識者を招いた研究会を開いて研究成果を報告し、議論する。それを踏まえて、後期の最後に研究成果をまとめる。まとめた研究成果の公表も速やかに行う。 なお、研究計画に変更はなく、研究を遂行する上での課題等も特にない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、物品費、人件費を当初の予定より抑えることができたことから繰越金が発生した。それを、成果をまとめる年度にあたる平成25年度において活用したい。 平成25年度では、資料の収集・整理・調査検討の作業が引き続き必要であることから、資料収集出張費、書籍購入費、複写印刷費、文具購入費、研究補助者への謝金、パソコン消耗品購入費等を執行する予定である。それと並行して、研究成果の公表に向けた研究会報告、成果をまとめる作業が必要となることから、研究打ち合わせと成果発表のための出張費及びノート型コンピュータ、ICレコーダー、モバイルプリンタ等の購入費を執行する予定である。
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Research Products
(2 results)