2012 Fiscal Year Research-status Report
日本婚姻法再考の素材としての同性カップルの法的取扱い-多国間比較研究を通して
Project/Area Number |
24730066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大島 梨沙 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20580004)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 婚姻法 / フランス / ベルギー |
Research Abstract |
本研究は、現行日本法の下で、同性カップル(同性愛によって結びついた同性同士の結合)をめぐる法的課題に対処するための具体的解釈論を提示する作業を通して、わが国の婚姻法を再考することを目的とするものである。日本法下での解釈論提示のための前提として、最初の2年間は、外国法研究を中心に行う。 平成24年度は、ベルギー及びフランスにおいて、同性カップルにどのような法的効果をどのような理論の下で与えているのかについて調査を行ったうえで、両国それぞれの同性カップル法制および婚姻理解の特徴を提示する作業を行った。 すなわち、フランスにおいては、パックス(民事連帯協約)および内縁として、同性カップルに一定の法的効果を認めているが、パックスはあくまでも共同生活を送るための当事者間の契約であるため、家族形成にかかわる効果(姻族関係の発生、相続権、子との親子関係等)は同性カップルには認められていない。この点を改善するため、同性カップルにも婚姻を可能とする法案が審議中である(昨年度研究当時、本報告書提出時点では法案が成立)。これに対し、ベルギーでは、内縁以外に、法定同居および婚姻として、同性カップルに法的効果を与えている。法定同居は、パックスとは異なり、契約ではなく単なる事実状態の登録であると位置づけられている。このため、近親関係であっても法定同居が認められる一方、パックスほどの法的効果は認められていない。他方、ベルギーでは、同性カップルでも婚姻が可能である。婚姻は、必ずしも生殖と結び付けて考えられるものではなくなり、2人の当事者間の継続的・人格的な関係と位置付けられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、ベルギー及びフランスにおいて、同性カップルにどのような法的効果をどのような理論の下で与えているのかについて調査を行い、両国の特徴を提示する計画であったところ、下記の通り、計画通りに研究が進行している。 (1) ベルギーの状況について、文献収集とその分析を行い、その結果を、7月24日に新潟大学民事法研究会において報告した。また、9月には、ベルギー(ルーヴァン・カトリック大学)を訪問し、ベルギーの家族法研究第一人者のJean-Louis Renchon氏との面会が実現した。その際、同氏に来日を依頼し、平成25年9月に日本においてシンポジウムを開催する運びとなった。 (2) フランスについては、新刊書籍・雑誌論文・裁判例等を分析し、その成果の一部を、6月の比較法学会ミニシンポジウム「同性婚」において、「フランス」担当者として報告した(後掲「研究発表」欄参照)。また、9月にフランス(パリ第2大学)を訪れた際に、若手家族法研究者のJean Garrigue氏ほか数名の研究者と知己を得、当時高まっていた同性婚導入に関する議論等について意見交換を行った。なお、Garrigue氏もまた、平成25年度に、上記シンポジウムのため、来日していただく予定である。 (3) 平成25年度は、ベルギー・フランスに加えて、カナダ・アメリカ・イギリスにおける同性カップルの法的取扱いをも研究対象とする予定であるが、これらの国の状況について既に研究されている、鈴木伸智氏、田巻帝子氏らとの研究会開催を、5月末および8月に予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度に明らかにしたフランス・ベルギーの状況を相対化するため、両国とは異なる手法を採用している、カナダ・イギリス・アメリカにおける同性カップルの法的扱いを主たる研究対象とする。しかしながら、平成25年4月に、フランスにおいて、同性婚を可能にする法案が可決されたため、フランスの最新の動向についても研究を続ける必要がある。よって、双方の作業を並行して行う。 (1) カナダ、イギリス、アメリカについては、既に邦語での先行業績が蓄積されているため、まずはそれらを渉猟・分析する。また、これらの国の同性カップルの法的取扱いに詳しい、鈴木伸智氏、田巻帝子氏、河北洋介氏らとともに、8月上旬までに研究会(仮称「同性婚研究会」)を行う。以上に加えて、9月末までにカナダ・アメリカに赴いて原語文献収集等を行うことにより、各国それぞれの特徴を把握する。 (2) フランスの同性婚導入をめぐる最新動向について研究し、5月末の同性婚研究会において報告する。また、9月上旬にRenchon氏、Garrigue氏を招聘して実施するシンポジウムを通して、フランスの最新動向に関する知見を深める。また、3月に予定していたイギリスへの調査研究の際に、フランスにも立ち寄り、同性婚導入後の状況についてインタビュー調査を行う。 最終年度の平成26年度は、日本法での解釈論の定立を目指して、前年度までの研究の成果を日本法の状況と対比し、応用の可能性を探る。そのために、日本の当事者へのインタビュー調査や、学会報告を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に使用予定であった研究費のうち、海外渡航費(フランス・ベルギーでの調査研究費)の一部が、旅費を切り詰めたために、次年度(平成25年度)に使用可能となった。当該研究費は、フランスでの同性婚導入という最新動向を受けて、平成25年度に新たに必要となった、フランスでの調査研究費(当初予定のイギリス渡航に付随する形で実施)に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)