2014 Fiscal Year Research-status Report
日本婚姻法再考の素材としての同性カップルの法的取扱い-多国間比較研究を通して
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24730066
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大島 梨沙 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20580004)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 婚姻 / 同性カップル / 法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現行日本法の下で、同性カップルをめぐる法的課題に対処するための具体的解釈論を提示する作業を通して、わが国の婚姻法を再考することを目的とするものである。本研究3年次にあたる平成26年度は、年度途中で出産のため本研究を中断し、年度末に研究に復帰した。したがって、平成26年度の実績は十分なものではないが、下記の成果を得ることができた。 第一に、日本における同性カップルへの生活保障のあり方として、大きく分けて、①行政レベルでの対応、②判例での対応、③立法での対応が考えられるが、これらそれぞれの利点と限界とを明らかにし、その成果を発表することができた。第二に、①行政レベルでの対応として、渋谷区がパートナーシップ証明を同性カップルに発行することを可能にする条例を制定したが、本条例の意義と限界を検討することができた。この成果は、平成27年度初頭に公表する予定である。第三に、②判例での対応として、従来男女の非婚姻カップルについて発達してきた内縁準婚理論を同性カップルにも適用することが考えられるが、このためには内縁準婚理論自体を再検討することが必須となる。その前提作業として、同理論を最高裁が肯定するに至った著名判例の検討を行うことができた。 第四に、③立法での対応の1つとして、日本での同性婚の導入が考えられるが、その可能性を検討するにあたっては、日本の婚姻概念の特徴を明らかにする作業が不可欠であるところ、前年度までの研究の成果を踏まえて、フランスと比較した場合に見えてくる日本の婚姻制度、婚姻概念の特徴を示すことができた。第五に、フランスでは2013年に同性婚を可能とする立法が行われたが、当該法律の内容がどのようなものであったかを明らかにすることができた。その成果は、平成27年度前半に公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画と比較すると、研究最終年度の1年前の研究状況としては、カナダ・イギリス・アメリカにおける同性カップルの法的取扱いに関する研究が遅れている(これらの国に関する検討が進んでおらず、成果も公表できていない)ものの、その一方で、日本の状況に関する研究は、計画よりも早く進んでいる(最終年度に明らかにする予定であった内容の一部を既に公表することができた)。したがって、全体としては、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、以下の3つの作業を行う。 (1)これまで研究が手薄となっていたカナダ・イギリス・アメリカにおける同性カップルの法的取扱いを研究し、これまでに明らかにしたフランス・ベルギーの在り方を相対化する。既にこれらの国に関する文献の渉猟は一定程度行っており、これらの国の状況に詳しい研究者とも面識がある。これらを活用しつつ、不明な点があれば調査研究に赴くことにより、カナダ・イギリス・アメリカの状況を把握する。 (2)既に一定の成果があるフランス・ベルギーについても、2013年にフランスが同性婚を導入し、その後、同性カップルと生殖補助医療について議論がなされるなどの動きがみられるため、調査研究によりアップデートを図る。 (3)近年は日本でも渋谷区の条例制定をきっかけに様々な目に見える動きが出てきたため、これらをフォローしつつ、(1)(2)での成果を踏まえ、日本における同性カップルの法的取扱いに関する具体的な見解を提示する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に使用する予定であった海外渡航費すべてと、国内旅費の一部、物品費や消耗品費等として使用予定であったものの一部が、妊娠と出産による研究中断のため、次年度に繰り越す形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2回の海外調査費(フランス・ベルギー・イギリスでの調査研究とカナダ・アメリカでの調査研究)として60万円程度、学会参加や発表にかかる旅費として20万円程度、書籍費として20万円程度、消耗品費や謝金等に15万円程度を使用する予定である。
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Research Products
(8 results)