2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本婚姻法再考の素材としての同性カップルの法的取扱い-多国間比較研究を通して
Project/Area Number |
24730066
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大島 梨沙 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20580004)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 同性カップル / 婚姻 / パートナーシップ制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現行日本法の下で、同性カップルをめぐる法的課題に対処するための具体的解釈論を提示する作業を通して、わが国の婚姻法を再考することを目的とするものであった。 研究最終年度である平成27年度は、次のような成果をあげることができた。(1)同性婚を可能にするために行われた2013年のフランスの立法について、立法に至る経緯や法律の内容、立法後に生じた数件の裁判例がどのようなものであったかを明らかにすることができた。(2)同性カップルに対する行政の対応として注目を集めた渋谷区の条例について、その内容を検討し、運用にあたっての解釈上の課題を示すことができた。(3)同性カップルを含む、カップルの財産関係のフランスでの法的取扱いがどのようなものかの概要を示すことができた。 4年間の研究期間全体を通じて、明らかにすることができたのは、(1)フランスおよびベルギーにおける同性カップルの法的取扱いと両国の婚姻概念の特徴、(2)それと比較した場合に抽出される日本の婚姻概念の特徴(夫婦間の不平等の残存、社会通念が果たす役割の大きさ、枠組みの硬直性など)、(3)日本における同性カップルの生活保障の手段として考えられる選択肢とそれぞれの利点・欠点の3点である。 以上の結果、同性カップルをめぐる法的課題についての具体的解釈論として、同性カップルの養子縁組の有効性、内縁準婚理論の同性カップルへの適用可能性について、いずれも肯定しうる(同性カップルであることをのみ理由として否定されることはない)ことを示した。だが、同性カップルによる「共同生活契約」締結に関する解釈論については、今後の研究課題として残された。また、本研究の目的であった日本の婚姻法再考については総論的な検討に留まったため、今後は各論にも対応しうる議論として提示する必要がある。
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Research Products
(7 results)