2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垣内 秀介 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10282534)
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Keywords | 裁判外紛争解決手続 / 裁判外紛争処理 / ADR / ADR法 / ドイツ法 / フランス法 / EU法 |
Research Abstract |
2013年度においては、研究計画に従い、前年度までの作業を継続しつつ、比較法研究に関しては、EUの個別加盟国、中でも、日本と比較的問題状況の近いドイツ及びフランスの状況に重点を置いた調査・検討を行った。とりわけ、ドイツに関しては、2013年度後半に在外研究の機会を得たことから、2008年欧州指令の国内担保法の実施状況やこれをめぐる議論についての調査を実施することができた。また、日本法に関しては、引き続き、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の見直しに関する動向も注視しつつ、ADRに対する国家法の関与と私的自治の原則との関係を中心として、分析・検討を行った。 具体的には、まず、ドイツについて、欧州指令の実施法の施行からなお間もないことから、その影響を推し量ることはなお容易ではないが、少なくとも現時点においては、同指令またはその実施法の効果としてメディエーションの利用の活発化といった事態が生じているとは考えにくく、そのため、より強力な促進策を求める声がみられること、関連して、2002年頃から各ラントにおいて順次実施されてきた裁判所内メディエーションに関しても、公刊された文献から受ける印象とはやや異なり、一般にはなお懐疑的な見方が根強く存在し、利用件数も、特段急増しているとは言えないようであることなどの知見を得た。これらの研究成果については、2014年度以降における公表を予定している。 また、日本法に関しては、国によるADRに対する法規制が考えられる分野の一例として、秘密の取扱いに関して検討し、日本においても関連する立法が十分に考慮で値するものであるとの暫定的な結論を得たほか、紛争解決過程全般の規律のあり方について、当事者の自己決定を出発点とする基本的な指針を、他の共著者との共同作業の成果として公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(ア)裁判外紛争解決手続(ADR)に対する国家法の関与のあり方について、EU諸国及びアメリカを対象とした比較法的研究、及び、司法権、民事訴訟制度の目的、私的自治の原則など、関連する伝統的諸概念の再検討を通じて、基礎的な理論枠組を構築するとともに、(イ)国による民間型ADRの促進・規制のあり方について、上記基礎理論を踏まえた具体的提言を行い、わが国における今後の民間型ADRに関する施策のための指針を提供することを目的とするものである。 研究実績の概要に示した通り、2013年度においては、日本法及びEU諸国、とりわけドイツに関する調査・検討を通じて、上記(ア)で述べた理論枠組構築のための基礎的な知見を得ることができたこと、当事者の自己決定を基礎とした紛争解決手続全般の規律枠組みについての考察を進めることができたこと、各論的な考察の1つとして、秘密の取扱いに関する立法論的な検討を進めることができたことから、次年度以降の研究の継続により、概ね研究計画に示した通りの研究の進展を期待することができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、日本法に関して、ADRをめぐる従来の議論のほか、司法権及び裁判を受ける権利をめぐる憲法学上の議論、民事訴訟制度の目的に関する民事訴訟法学上の議論について引き続き検討を深めるとともに、これらについて日本法と相当程度理論的前提を共有しているドイツ法についての研究をさらに進めることとしたい。その成果については、2014年度以降に積極的に公表することにより、研究代表者の立場に対する学界等からのフィードバックを得て、さらに検討を深めることを可能にしたい。また、2013年度においては、約6ヶ月間ドイツに滞在して調査・研究をすることができたが、その間に得た関係者等との意見交換・情報交換を継続することにより、そこで得た知見をさらに掘り下げることを予定している。 また、日本のADR法との関係では、2013年3月に公表されたADR法に関する検討会の報告書等についての分析を行うことにより、今後の立法および解釈に関する実践的な提言の可能性を検討することとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度における研究費の使用は、ほぼ想定にしたがったものであったが、年度後半にドイツにおける在外研究を実施し、その間の研究費使用が事実上制約されたために、残額が発生したものである。 次年度においては、引き続き日本法及び各国法の資料収集のために研究費を使用するほか、日程上可能であれば、外国調査のために旅費を支出する予定である。また、調査・研究に要する若干の機器を購入することを予定している。 以上の支出により、次年度も、概ね研究計画に従った研究費の使用を予定している。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Guide for Regulating Dispute Resolution(GRDR): Principles2013
Author(s)
Felix STEFFEK, Hannes UNBERATH, Lin ADRIAN, Aldo DE MATTEIS, Giuseppe DE PALO, Frederique FERRAND, Reinhard GREGER, Jana HARTLING, Ulrike JANZEN, Shusuke KAKIUCHI, Lars KIRCHHOFF, Peter G MAYR, Isaak MEIER, Kristin NEMETH, Machteld PEL, Anneken K SPERR, Ivan VEROUGSTRAETE
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Journal Title
STEFFEK, Felix/ UNBERATH, Hannes (ed.), Regulating Dispute Resolution: ADR and Access to Justice at the Crossroads (Hart Publishing, 2013)
Volume: なし
Pages: 3-11
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[Journal Article] Guide for Regulating Dispute Resolution(GRDR): Principles and Comments2013
Author(s)
Felix STEFFEK, Hannes UNBERATH, Lin ADRIAN, Aldo DE MATTEIS, Giuseppe DE PALO, Frederique FERRAND, Reinhard GREGER, Jana HARTLING, Ulrike JANZEN, Shusuke KAKIUCHI, Lars KIRCHHOFF, Peter G MAYR, Isaak MEIER, Kristin NEMETH, Machteld PEL, Anneken K SPERR, Ivan VEROUGSTRAETE
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Journal Title
STEFFEK, Felix/ UNBERATH, Hannes (ed.), Regulating Dispute Resolution: ADR and Access to Justice at the Crossroads (Hart Publishing, 2013)
Volume: なし
Pages: 13-32
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