2013 Fiscal Year Research-status Report
遺言における財産処分の自由の限界―遺言者の遺言の自由と受益者の財産処分の自由―
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24730071
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石綿 はる美 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10547821)
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Keywords | 民法 / 相続 / 遺言 / 所有権 |
Research Abstract |
平成25年度は、以下の2点を中心に研究を行った。 1.フランス相続法の研究:研究テーマである、遺言において受遺者の処分権をどのように制限することができるのかという点を明らかにするために、比較法研究から示唆を得ることを目標として、フランス民法典の継伝処分と用益権・虚有権の恵与という二つの制度についての研究を行った。両制度は類似の性質を有するとされているが、前者は原則として禁止されており、後者は有効な処分であるとされている。両者の区別基準、なぜ後者の用益権・虚有権の恵与は有効な処分であるとされるのかという点について明らかにすることで、フランス法において、受遺者の処分権を制限することについての限界についてどのように考えられているのかという点を明かにすることができると考えるからである。研究成果は、「遺言における受遺者の処分権の制限―相続の秩序と物権の理念―」というタイトルのもと法学協会雑誌に掲載をしている。 2.フランス夫婦財産制の研究:フランス法の相続法について理解するためには、その前提として、夫婦財産制の理解が不可欠である。配偶者の一方が死亡した際に、相続財産の分割に先行して、夫婦間で夫婦財産制の清算が行われる。それを踏まえての相続、遺言制度であることから、フランスにおける相続実態を理解するためには、その前提になる夫婦財産制の理解が必要なのである。この点については、Malaurie et Aynes, Les regimes matrimoniaux, Defrenois, 4edを中心に研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展していると考えている。 まず、フランス法の研究については、継伝処分、用益権・虚有権の恵与という二つの制度についての制度概要についての調査・研究はほぼ終了した。この点については、法学協会雑誌に「遺言による受遺者の処分権の制限―相続の秩序と物権の理念―」として公表も行った。そして、継伝処分が原則禁止され、用益権・虚有権の恵与が容認されている理由は、受益者に課せられた義務、特に、「保存の義務」の内容の違いではないかという点が仮説として成立したことから、その点についての研究を、類似する残存物遺贈や、譲渡禁止特約付きの恵与等にも視野を広げながら行っており、今年度中に、論文にまとめることが可能であるという見込みがある。 次に、ドイツ法の研究については、詳細な検討についてはこれからであるが、先行研究の調査から、先位・後位相続において、先位相続人の処分権等の権能の制限をどこまで行うことができるのかという点と、用益権の遺贈と先位・後位相続の違いをどのように考えているのかという点について中心に検討を行うことで、ドイツ法において受遺者の処分権を制限するという点について、どのように考えられているかということを一定程度明らかにすることができるのではないか、という結論を得ることはできた。今後は、ドイツ語文献を調査することについえ、この点について一定の見解を得ることができるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、以下の3つの方向性に基づいて遂行する予定である。 1.フランス相続法研究:フランス相続法の研究に関しては、2年間の研究成果を公表することを目指す。具体的には、法学協会雑誌への連載(平成26年度は計4回を予定)による公表を予定している。前年度までは、フランスにおける継伝処分および用益権・虚有権の恵与というそれぞれの制度の内容を詳細に検討することを中心に行った。今年度は、最終年度であり研究のまとめの年でもあることから、フランス法研究については、フランス法において、受遺者の処分権を制限することの限界についてどのように考えられているのかという点について、まとめとして一定程度の示唆を明らかにすることを目標とする。 2.ドイツ相続法研究:ドイツにおける先位・後位相続の研究を中心に行う。同制度はフランスの継伝処分と起源を同じにする制度であるが、ドイツにおいては有効な処分として認められている。先位相続人から後位相続人への財産の移転を確実なものにするために、先位相続人の処分権を一定程度制限することが認められている。ドイツ法においては、どのような制限まで有効なものとして認められているのかという点を中心に研究を進めていく。 3.フランス夫婦財産制の研究:フランス法の相続法について、各制度の利用実態、利用目的を理解するためには、夫婦間の財産関係について規定している夫婦財産制についての理解が不可欠であると考えることから、この点についての研究も引き続き行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定では、平成25年度にフランスへの海外出張を予定をしていたが、必要な資料が国内において収集できたこと、研究の進行状況を鑑みて、海外出張に行かなかったことから残額が生じた。 本年度の使用計画としては、物品費に充てるとともに、資料収集のために旅費としても利用する予定である。
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Research Products
(2 results)