2012 Fiscal Year Research-status Report
専門家法人制度の総合的研究:フランスの専門家会社制度の検討から示唆を得て
Project/Area Number |
24730072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
内田 千秋 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (40386529)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 専門家 / フランス / 専門家法人 / 監査法人 / 医療法人 / 司法書士法人 / 弁護士法人 / 法人法 |
Research Abstract |
【研究の目的】 本研究は、専門家がその専門職業を実施するための組織について、フランスの制度を横断的な視点から総合的に研究することを目的とする。平成24年度は、フランスの専門家会社制度一般を明らかにすることを研究計画として掲げていた。 【1.専門家会社制度一般に関する研究】 第一に、専門家会社制度一般に関する仏語文献を参照したが、専門家のための会社として、フランスでは「専門職民事会社」、「自由職遂行会社」、「自由職匿名組合」、「自由職財務参加会社」制度が置かれている。これらの会社制度の利用はデクレにより各種自由職専門家に認められているため、専門家会社制度一般だけではなく、各種自由職専門家の事業組織に関する文献も精読する必要性を感じた。 【2.フランスにおける「自由職専門家」の範囲】 第一の研究を通じて、日本におけるよりもフランスにおける「自由職専門家」の概念の方が広範であることが明らかになった。また、たとえば同じ法律職でも、日本におけるのと(弁護士、司法書士、公証人等)フランスにおけるのと(弁護士、代訴士、公証人等)では、職域の棲み分けが大きく異なることも明らかになった。そこでフランスにおけるこれらの自由職専門家の歴史および現状に関する文献も収集し、その理解を深めた。 【3.日本における自由職専門家のための事業組織】 フランスにおける多くの自由職専門家のうち、法律職、医療職(医師、歯科医、看護士等)、技術職(会計監査役、専門会計士、建築士等)をとりあげ、これらの自由職専門家のための会社法制を詳しく研究することとした。その前提として、日本におけるこれらの専門家の組織法制に関する文献を参照した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の前提としてこれまで、フランスにおける会計監査役制度および会計監査役会社制度に関する研究を行ってきたが、平成24年度は、会計監査役会社制度も含めた、会計監査役制度一般およびその民事責任について、博士学位論文を提出した(内田千秋「フランスにおける会計監査役の民事責任」2013年2月に早稲田大学大学院法学研究科に提出・受理)。本研究の目的に関連する研究としては、専門家会社法制のうち会計監査役会社制度について、博士学位論文の記述のアップデートを行っている。 平成24年度は博士学位論文の執筆と並行して、専門家会社に関する文献・自由職専門家に関する文献を収集したが、博士学位論文の提出時期と重なったため、本研究に関する論文を公表するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、今年度はさらに資料の収集に努めるとともに、文献の精読・論文の執筆を行いたいと考えている。 今年度はまず、(1)フランスにおける専門家会社法制一般について論文を執筆した後、(2)各種専門家会社における社員の責任に関する論文にも着手したい。 1.専門家会社法制一般 第一に、フランスにおける「自由職専門家」概念の範囲を検討したうえで、これらの自由職専門家が、個人事務所から民事会社を経て商事会社をとるに至った歴史的経緯を明らかにする。第二に、専門家会社法制のうち、特に専門職民事会社・自由職遂行会社について、その制度(社員構成・持分の譲渡、機関構成等)に関する文献を精読する。第三に、これらの会社法制の各種専門家への適用についても個別に検討する。自由職専門家の範囲が広範であるので、法律職・医療職・技術職などに分類して論文の執筆を進める。 2.専門家会社における社員の責任 (1)の研究と並行して、各種専門家会社における社員の責任(有限責任か無限責任か)、およびそれを担保する制度の研究も進める。なお、各種専門家について、一般の商事会社、有限責任一人企業等の組織形態をとることも認められている場合があるので、これらの組織形態についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、旅費(研究資料収集のため、新潟大学・早稲田大学間の交通費等)・物品費(文献等の購入)に充てる予定である。
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