2014 Fiscal Year Research-status Report
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24730073
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大澤 慎太郎 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (90515248)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 保証 / 担保 / 民法 / フランス法 / 警告義務 / 貸手責任 / 過剰 / 金融機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、当初予定していた研究の最終年度(延長申請により27年度が最終年度となる)ということもあり、前年度までの残された課題を継続的に研究しつつ、結論の提示に向けた研究を進めた。 1 中心的な研究としては、フランス法において特別法および一般法上に展開している保証人の保護に関する規律についての従前の研究成果を整理・統合し、保証人の保護に係る望ましい規律の具体的モデルを提示すべく考察を進めた。ここから、債権者、債務者および保証人という、保証契約における関係当事者間の利益の均衡化と規律の合理化という視点に基づき、各種の規律を「警告義務」へと解消させ、一元化することが、保証人の保護に係る規律についての現状における最適解となることを結論付けた。この一連の作業と成果についてまとめた論文(論題:「フランス保証制度の研究―保証人の保護に関する規律の構造を中心として―」)をもとに、早稲田大学に博士の学位を申請し、平成27年2月27日付で学位(博士〔法学〕)の授与が認められた。 2 附随的研究としては、平成25年度の研究から得られた副次的成果である、担保制度全体に係る過剰を規律する法理の可能性について考察を進めた。この点については、「関西フランス法研究会(平成26年8月17日)」において研究報告(論題:「フランス担保制度における『過剰』の法理」)を行い、平成27年度中にはその成果を公表できる予定である。また、一連のフランス法研究をもとに、保証の基本的性質に係る考察も進めた。その具体的な試行として判例研究を行い、「担保法研究会(平成27年3月20日/於:早稲田大学)」にて研究報告をし、成果についても公表した(「相続により主たる債務者の地位を承継した保証人による債務の弁済と主たる債務にかかる消滅時効の中断の有無」『千葉大学法学論集』29巻4号61頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度において予定されていた計画は、「社会・経済構造に力点を置いた金融機関の融資行動の把握」、「法人保証の研究」および「倒産処理法制の把握」と、これらを含めた従前の研究成果からの「結論の提示」であった。当初の最終年度ということに鑑み、「結論の提示」に多くの時間を裂いたということもあって、前三者については研究が難航し、なお独立した成果の公表には至っていない。しかしながら、概要でも示した通り、従前の成果を整理・統合し、本研究の目的に対応した一定の具体的結論を提示するまでには至っており、この結論には、前三者に係る研究の成果が明示的または黙示的に含まれている。 また、平成25年度に予定していたフランスでの現地調査については、研究の効率性および質の確保という観点から、当該年度における実施を取り止め、平成26年度において代わりに行う計画であったけれども、準備研究の遅延や地政学上の問題等から結果として実現することは叶わなかった。もっとも、絶えず収集を怠らなかった各種資料の精査や成果の再検討、または、研究会での報告等を通じて、充分な研究の質の確保に努め、その結果として、一定の結論の提示にまで至ったことは先の通りである。 以上の点からして、不十分な点も多々あるけれども、全体として、研究は概ね順調に進んでいるものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1 独立した成果の公表にはなお至っていない、フランスにおける「社会・経済構造に力点を置いた金融機関の融資行動の把握」、「法人保証の研究」および「倒産処理法制の把握」に係る研究活動を、公表に向けて継続する。 2 現在わが国において進行中の「民法(債権関係)の改正」において実現される予定の保証人の保護に係る各種規律の創設に関して、本研究の成果を基礎とした考察を行う。 概要においても示した通り、本研究課題の目的は既に一定程度達成されていることから、これらの研究はかかる成果を補完し、さらに充実した成果を獲得するためのものと位置付けることができる。なお、2で示した研究については、本研究の最終年度を延長した主たる理由でもあるため、特に力点が置かれることとなる。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、平成25年度において実施する予定であったフランスでの現地調査を行う計画であったところ、準備研究の遅延や地政学的な事情等からこれが困難となり、その旅費が残ることとなった。ところで、研究開始当初は結果が見えなかった、「民法(債権関係)の改正」において創設される予定の保証人の保護に係る規律の内容が具体化し、現在では、最終的な結論が示されるのも時間の問題となっている。それゆえ、本研究の成果を基礎として、かかる改正によってもたらされるであろう各種の規律についても考察を加えておくことが、保証人の保護に係る望ましい規律を探るという本研究の目的との関係で、より充実した成果を提示することに繋がるものと期待される。それゆえ、上記の未使用額を原資として、主に、本民法改正に係る考察を行うために研究期間を延長したことが、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の事情から、「民法(債権関係)の改正」を扱ったものを中心とした民法関連の資料・文献の収集や研究会等への参加、および、各種消耗品の購入等のために研究費を使用することとしたい。併せて、平成26年度までに終えることができなかったフランス法研究に係る残された課題に関しても研究を継続するために、フランス法関連の資料収集や、現地調査等のための原資にも充てることとしたい。
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[Book] Les notions fondamentales de droit civil - Regards croises franco-japonais2014
Author(s)
Denis MAZEAUD, Mustapha MEKKI, Noki KANAYAMA, Katsumi YOSHIDA, Nathalie BLANC, Olivier BUSTIN, Philippe CHAUVIRE, Audrey COLIN, Megumi HARA, Shunichiro KOYANAGI, Yves-Marie LAITHIER, Mathias LATINA, Laurent NEYRET, Nao OGINO, Aya OHSAWA, Ippei OHSAWA, Shintaro OSAWA, Yves PICOD, Yuki SAITO, Kazuma YAMASHIRO
Total Pages
302(113-124)
Publisher
LGDJ