2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730076
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮本 誠子 金沢大学, 法学系, 准教授 (00540155)
|
Keywords | 民法 / 相続 / フランス法 / 遺産共有 / 財産管理 / 遺産分割 / 相続債務 / 清算 |
Research Abstract |
今年度は、1、昨年度の検討内容を踏まえて、フランス相続法における相続債務の扱いについて分析を続けた。フランスでは判例および1976年12月31日の法律による民法典815条の17によって、相続債権者が遺産分割前に遺産の積極財産において先取りして弁済を受けること、さらに、遺産の積極財産の差押え及び売却をおこなうことが認められている。同様の処理が日本法においても可能かを探るため、このような処理が認められる根拠・背景となっている考え方を分析した。そして、遺産という財産体とのとらえ方、および、そのような財産体を相続人が遺産を管理・所持しているという視点が重要であることを明らかにした。これらについては、既に論文としてまとめている(公刊時期は未定)。 2、他方で、わが国における相続債務の処理について検討を始めた。今年度は単純承認の場合に絞って検討した。最近の最高裁判決、最判平成21年3月24日民集63巻3号427頁は、遺留分減殺請求において遺留分侵害額を算定するにあたり、遺留分算定の基礎財産に加算される相続債務の額がいくらなのかが争われたものであるが、その前提として、指定相続分がある場合の相続債務の分割、相続人間での内部的負担についての考え方が示された。この判決の内容を分析し、残された課題を明らかにした研究成果の一部は、拙稿「『財産全部を相続させる』旨の遺言がある場合の遺留分侵害額算定における相続債務額の加算」金融・商事判例1436号(2014)116頁以下で公刊した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランス法の研究については、昨年度末に渡仏して収集した文献を特に大いに利用することもできた。また、今年度おこなったわが国の最高裁判決の分析の結果、相続人間の求償が問題になることが明らかになっていたが、今年度末に渡仏した際、この点についてのフランス法の考え方など、次年度の研究につながるヒントを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
相続人間の権利義務関係の調整について、今年度末にフランスでヒントを得た。まずは、この点について分析をおこない、研究成果としてまとめる。また、遺産分割に先立って相続債務を遺産の積極財産から弁済することが可能か、その場合の相続人間の関係をどう考えるか、単純承認の場合に遺産分割において相続債務を弁済することは可能かなどを検討し、研究成果をまとめる。
|