2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730087
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青木 仁美 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (80612291)
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Keywords | 成年者保護制度 / 成年後見制度 / 民法 |
Research Abstract |
申請者は、昨年度1月にスイスおよびオーストリアへ出張し、成年者保護制度の専門家(スイス・ベルン大学ヴォルフ教授、ベルン成年者保護官庁ファスビンド氏、オーストリア・インスブルック大学ガナー教授)と面会し、申請者のテーマである成年者保護制度における法定代理について議論し、資料を収集した。本年度は、当該出張で得た資料をもとに、論文の執筆および公表を行った。 論文では、スイス法に関し、現行のスイス民法典が法定代理という制度によっていかに本人の能力を制限しつつ、本人を保護してきたかという点に焦点をあてた。スイス民法典は、1912年に施行された。このため、申請者は、法定代理を論じる前提として、スイス民法典制定の歴史を明らかにしたうえで、1912年から現行法に至るまでの法定代理における本人の能力制限の流れを解明した。ここでは、スイス成年後見制度の法定代理においては、民法典施行からすでに本人の能力制限を行わない類型が存在し、2013年の新法によってさらに抑制的に行う類型が創設されたことを明らかにし、日本の成年後見制度が本人の能力を必要以上に制限していることを説いた。本論文は、青木仁美「スイス成年後見法における法定代理権の変遷」五十嵐慶喜=近江幸治=楜澤能生(編)『民事法学の歴史と未来ー田山輝明先生古稀記念論文集』(成文堂、2014年3月)579ー603頁として公表した。本論文は、今後予定している成年者保護制度研究の基礎となる意義を有する。 また、申請者は現在博士論文をもとにした単著『オーストリア成年後見法制』(成文堂、2014年9月発行予定)の校正段階にあるが、本年度の研究をもとに、本書においてもスイス後見法の知見を加えた。 さらに、本年度の研究成果をもとに、2014年4月26日に「オーストリアおよびスイスにおける成年者のための医療代諾権」と題した発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、日本の成年者保護制度に必要な主たる改正点として、①成年後見制度における法定代理の抑制的利用方法、②成年後見制度以外の保護制度の創設の2点を挙げている。本年度の研究により、①を証明するための基礎となる論文を公表できたと考える。また、本論文の公表により、②の成年後見制度以外の成年者保護制度の研究へ移行することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
社会は、高齢化し、かつ法化している。高齢者を含めた成年者保護が成年後見制度の一択しかなければ、そこには常に法定代理による本人の能力制限が伴う。今後の研究は、成年後見制度以外の成年者保護をどのように法的に整備するかについて行う。たとえば、医療同意見や居所決定権、近親者に与える簡易な法定代理権といった点である。本領域では、スイス、オーストリアおよびドイツにおいて近年法整備が進んでいる。このため、研究は、当該3か国を対象に、文献調査および関係研究者に対する調査を行うという方法で進め、本年度中の論文公表を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
出張を計画していたが、前年度の出張および日本における収集で、本年度執筆分のための資料は調達可能であったため、論文執筆および公表に専念した。 前年度の残余分は、論文執筆資料の購入のために用いる。
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