2019 Fiscal Year Research-status Report
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24730090
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
清水 円香 立命館大学, 法学部, 准教授 (50452800)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 企業グループ / 親子会社 / 親会社の責任 / 事実上の取締役 / フランス会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、近時日本で活発に議論されているグループガバナンスの充実に関する示唆を得るため、フランスにおけるグループガバナンスに関する議論を調査し、そのなかで、本研究の中心的なテーマである「事実上の指揮者」概念を通じた親会社の子会社に対する責任がどのように位置づけられるかを整理した。フランスにおいては、日本のように親会社取締役の子会社管理義務を肯定する考え方は必ずしも共有されていないが、現実に、親会社の業務執行の一環として親会社取締役による子会社の管理が問題となる場面や、親会社取締役が子会社の業務執行に関与する場面は生じ得る。本研究は、このような場面をフランス法がいかに捕捉しようとしているかに特に着目した。一部の学説は、実務上の需要からグループ構成会社の取締役が他の同一グループ構成会社の業務執行に関与することを法的に正当化する手段として、子会社取締役の権限の親会社取締役・従業員への委譲という手段の活用を提案する。一方、親会社取締役が子会社の業務執行に関与し、子会社に損害が生じた場合、行為と責任の所在を一致させ、親会社取締役の責任を肯定することが望ましい。これを実現する観点から、親会社の「事実上の指揮者」該当性の認定基準の緩和を提案する学説もみられる。親会社が子会社の「事実上の指揮者」に該当し、子会社に対して責任を負う場合、親会社を指揮した取締役は親会社に対する義務違反を根拠として、親会社に対し責任を負うとすれば、この考え方は、親会社取締役による子会社の業務執行への関与につき、行為と責任の所在の一致を広く実現しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次の理由から研究の進捗は当初の計画より遅れている。本研究に対する補助事業の申請後、(1)2度産前産後休暇・育児休業を取得し、その間研究を進められなかったこと、(2)育児の必要が生じたことにより、研究時間を削減せざるを得ない状況となったこと、および、(3)新型コロナウイルス感染拡大防止のため、勤務先の大学の授業形態に急遽変更があり、その対応のため、2020年3月は研究を進めることができなかったこと、である。前記(1)による遅れは、その大部分が2019年度の研究の進展によりカバーできたと考える。一方、前記(3)の事情の影響により、2020年6月に予定していた研究成果を公表する論文の完成に向けたスケジュールにつき、変更の必要が生じる見込みである。なお、2020年4月以降、新型コロナウイルス感染拡大防止のためキャンパスへの入構や大学図書館の使用が制限され、必要な資料を迅速に入手することが困難となり、2020年3月に生じた研究の遅延を補うことも、2020年5月時点では難しい状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
論文内容の工夫や、刊行時期の遅い別媒体への公表などの対策を検討している。
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Causes of Carryover |
本研究の成果を公表する予定の書籍につき、出版社への原稿の提出締切が2020年6月に設定されており、論文の内容をより精緻なものとするために、締切日まで研究成果の整理・検討を継続することが適切であると考え、それに要する費用を賄う額を次年度使用額としたことによる。
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Remarks |
法務省ウェブサイトにおける委託調査の成果物のページ(上記URL)に研究成果が掲載される予定であるが、2020年5月9日現在、事務処理上の都合により未掲載となっている。今後掲載される予定とのことである。
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