2013 Fiscal Year Research-status Report
証券市場における複合的な違法行為 いわゆる不公正ファイナンスについて
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24730091
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
上田 真二 関西大学, 法務研究科, 准教授 (00359770)
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Keywords | 国際情報交換 / EU / 不公正ファイナンス / 偽計 |
Research Abstract |
本研究は、いわゆる不公正ファイナンスを研究対象とするものであり、具体的には、(a)不公正ファイナンスの類型化、(b)不公正ファイナンスに(金融商品取引法158条の)「偽計」を適用することに対する法的検討、(c)不公正ファイナンスが生じる制度上の問題点への言及、から構成される。とりわけ本年度は、上記(b)に関連する研究に注力した。 具体的には、比較法的観点からの検討のために、EU法におけるmarket abuseに関連する①文献・資料の調査および収集を行い、②分析・把握に努めた。①については、ドイツのマックスプランク外国私法および国際私法研究所へ訪問することによって、有益な文献・資料に接することができ、また収集することもできた。これに関連して、同研究所の研究者との意見交換の機会を得て、market abuseに関わる知見や重要判例に触れることもできた。②については、収集した文献・資料の分析を通じ、さらには、同研究所での意見交換から、market abuseに対する規制が、市場の健全性(integrity)を重視する思想であるとの感触を得た。市場の健全性を確保する結果として、(金融商品取引法制における重要な目的である)投資者保護も達成されるとの理解がうかがえる。 また、少し異なる観点から、不公正ファイナンスが反社会的勢力によって行われていることが多い実情に鑑み、反社会的勢力に事実上、乗っ取られた上場会社の上場廃止に関わる裁判例を研究する機会も得た。この研究については、本年末までに成果として著したい。 先にも述べたとおり、本年度は、上記(b)に関連する研究に注力したこともあり、(c)に関わる研究について、あまり進めることができなかった。先の裁判例の研究を通じて、証券取引所の上場制度や上場規則に注目することができたが、もう少し研究を深める必要があると感じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、先にも述べたとおり、不公正ファイナンスに(金融商品取引法158条の)「偽計」を適用することに対する法的検討に関連する研究に注力したが、とりわけドイツのマックスプランク外国私法および国際私法研究所を訪問することによって、同研究所の研究者との意見交換や文献・資料の収集を行うことができたのは、大きな成果であった。EU法の理解、market abuseへの理解も深めることができ、また、典型的な市場阻害行為であるインサイダー取引と相場操縦(これらの行為は(私見によれば)不公正ファイナンスに内在する行為と捉えられる)との境界を考える契機ともなり、その意味で、本研究はこれまでおおむね順調に進展していると評価できる。 しかし、本年度は、不公正ファイナンスが生じる制度上の問題点への言及に関わる研究について、あまり進めることができなかった。昨年度、不公正ファイナンスの裁判例を研究し(判例研究として公表)、本年度は、反社会的勢力に乗ったられた上場会社の上場廃止に関わる裁判例の研究を行い、証券取引所の制度(上場制度や規則など)に着目することができたが、もう少し(他の観点からを含め)研究を深める必要があると感じている。 また、(今年度中には著せなかったが)本年末までに、不公正ファイナンスの(事例の)類型化に関する研究を形にしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は先にも述べた(a)~(c)の3つから構成されるが、研究の進め方としては、文献・資料の調査および収集、それらの分析・検討を経て、論文の作成・公表という形を採る。今後の研究の推進方策においても、この形を継続する。 まず、(a)いわゆる不公正ファイナンスの類型化については、本年度も引き続き、文献等を中心とした事例の調査および把握に努めたが、今後は金融庁における審判の傍聴などの方策も実行したい。次に、(b))不公正ファイナンスに「偽計」を適用することに対する法的検討については、収集することができた相当数にのぼる外国法文献・資料について、今後もその分析および把握を引き続き行う。とりわけ、本研究との関連では、収集した文献の一つである、Emilios AvgouleasのThe mechanics and regulation of market abuseを優先的に分析対象として採りあげたい。 最後に、(c)不公正ファイナンスが生じる制度上の問題点への言及については、関連する裁判例の研究を公表することとし、さらに、証券取引所の制度(上場制度や規則など)に着目して、分析する形で進めていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)