2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730095
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
宮崎 裕介 神戸学院大学, 法学部, 講師 (20585096)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 株主代表訴訟 / 役員等の対第三者責任 / 直接損害 / 間接損害 / 429条1項訴訟 / 訴権 |
Research Abstract |
平成24年度は、役員等の対第三者責任(会社法429条1項)に基づく損害賠償請求訴訟(以下「429条1項訴訟」という)と株主代表訴訟(以下単に「代表訴訟」という)の両者の関係性の明確化について、日本法の検討を中心に考察を行った。 検討の方法としては、先ず、429条1項訴訟の訴権がどの範囲の株主まで認められてきたかの観点から学説を整理した。その結果、我が国の学説は直接損害のみに429条1項訴訟の訴権を認めるもの(直接損害限定説)と間接損害に関しても同訴訟の訴権を認めるもの(間接損害包含説)の2説を対立軸として議論が展開されてきたことが判明した。その上で、直接損害限定説が現在のところ一応の多数的見解と言えるが、その一方で間接損害包含説に立つ有力説も近時注目されつつあるのが学説の現状であると示した。学説の検討に加え、近時の裁判例について、下級審を中心に検討を加えた。というのは、この問題について明示的な判断をした最高裁判所の判例は未だないからである。裁判例を分析したところ、裁判所としては、原則として429条1項訴訟で救済される株主は直接損害を被った者に限られ、間接損害については代表訴訟によるべきだという姿勢にあることが伺い知れた。 以上の学説・裁判例の検討を踏まえ以下の結論に達した。すなわち、株主が損害を被った場合その第一次的な救済手段としては代表訴訟によるべきであり、これが不可能な場合に限って429条1項訴訟を許容すべきとするものである。このような考えをとることで、従来までは不明確と言わざるを得なかった代表訴訟と429条1項訴訟の関係性を明確にすることができ、かつ会社法を始めとした制定法上、手続き規範が準備されている代表訴訟を第一次的な手段とする方が429条1項訴訟を用いた場合に発生しうる手続上・法律上の問題点も回避できることが挙げられる。本年度はこの点を論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、(A)2008年のリーマンショック後の米国と日本の会社経営者等に対する責任追及訴訟制度の比較研究、および(B)我が国の会社法上の株主訴訟制度の位置づけの明確化、の検討を当初の研究計画としていた。(B)に関しては、論文として発表することで予定通りのペースで研究を遂行している。一方で、(A)に関しては、現段階では資料を蒐集し、分析している状況である。とは言え、米国についての情況については、現地での資料蒐集および専門家からのインタビューなどが必要である。平成25年の夏に渡米する予定であるので、それらの点については、次年度に研究を完成させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、前年度の積み残しでもある、2008年のリーマンショック後の米国と日本の会社経営者等に対する責任追及訴訟制度の比較研究、に加え当初の研究計画にある、会社法と金商法上の訴訟制度の比較研究を行う。 特に、金商法に関して申請者はこれまで十分な研究を行ってこなかったので、平成25年度は金商法に重点をおいて研究を遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、当初の研究計画にもあるとおり、金商法に関する研究に重点を置くので、まず金商法分野の書籍を日米問わず購入する予定である。また、金商法に関する研究報告をする予定であるので、それにあたっての旅費にも充てるつもりである。また、デスクトップパソコンおよびプリンターの購入を計画している。
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