2012 Fiscal Year Research-status Report
近代日本のアジア主義における思想と運動の連鎖-大川周明とその関係者を中心に
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24730108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中島 岳志 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40447040)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大川周明 / 煩悶 / 昭和維新 / ナショナリズム / アジア主義 / 血盟団事件 / タゴール |
Research Abstract |
戦前期における革新右翼の中核・大川周明の思想について研究を進めた。まず大川周明の思想形成期に注目し、「若き大川周明」という論文を執筆した。ここでは彼の思想形成の発端が青年期の煩悶にあり、そこから普遍宗教と社会主義への志向性が同時並行的に立ち上がったことを明らかにした。 また、大川が1920年代~30年代前半にコミットした昭和維新運動について、研究を進めた。大川は、1931年の3月事件・10月事件において中心的な役割を果たし、翌年の5・15事件では海軍青年将校に武器供与を行ったとして逮捕された。このプロセスで起きた1932年2月・3月の血盟団事件に注目し、単著『血盟団事件』(文藝春秋社、近刊)を書き下ろした。ここで大川がいかにして陸海軍の青年将校とのネットワークを構築し、いかにして井上日召を中核とした血盟団グループと行動を異にしたのかを明らかにした。また、大川が主催した行地社に注目し、大川の支持者がいかにして昭和維新運動に関わっていたのかを考察した。 さらに、大川のアジア主義の性質を明らかにするために、同時代のインドの詩人・ラビンドラナート・タゴールの来日に注目し、そこでの日本人との交流を通じた思想的問題について論じた。大川がけん引したアジア主義が、一方でアジアの連帯を模索し、またアジア的思想の構築を目指しながら、同時に帝国主義化していった要因について、具体的事例の考察を通じて明らかにした。 他にも現代社会・政治に対する批評・論考を、思想研究の延長上で展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の計画に沿って、順調に進んでいる。今年度の大きな課題は、大川周明の思想形成を考究し、のちの昭和維新運動との関係を明らかにすることにあった。そのための文献調査を積極的に行い、一部は業績として提出することができた。 文献調査では、特に初期大川周明の関係資料の収集に努めた。大川が道会の機関誌『道』『道話』に寄稿した論考を集め、分析を進めた。また、1910年代後半に交流を深め、思想的共鳴を示したポール・リシャールについても、徹底して資料の収集を行った。結果、大川思想の形成に関する基礎的な文献を入手することができ、次年度のさらなる調査・研究につなげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にそって、大川周明の思想研究を進めていきたい。今年度は、特に大川のアジア主義に研究の中核を置き、研究成果を積極的に発表していきたい。具体的には『アジア主義』『<愛国>と<アジア>』といった単著を出版する予定にしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ計画通り使用したが、発注した書籍の一部に品切れや絶版があったため、それらの購入が平成25年度にずれ込んで残額が生じた。すでに古書での手配を済ませており、入荷次第その支払いに充てる予定である。
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Research Products
(68 results)