2013 Fiscal Year Research-status Report
近代日本のアジア主義における思想と運動の連鎖-大川周明とその関係者を中心に
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24730108
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中島 岳志 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40447040)
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Keywords | アジア主義 / ナショナリズム / 超国家主義 / 昭和維新 / テロ / クーデター / 煩悶 |
Research Abstract |
研究計画に沿って、実績を積み重ねることができた。大川周明の国家改造運動について研究を進め、その一環として『血盟団事件』(文藝春秋)を公刊した。大川は1931年の3月事件・10月事件に関与し、5・15事件では実行犯の海軍青年将校たちに武器の提供を行ったことで逮捕された。1920年代後半から30年代にかけて進行した国家改造テロ・クーデターがいかなる思想に依拠し、いかなる構想を抱いて来たのかを、大川の論理と行動に触れつつ明らかにした。 血盟団事件を主導した井上日召は、大川に接近しつつ、最終的には距離を取った。その大きな要因は、大川の設計主義的思想にあった。大川はクーデターが成就すれば、自ら入閣し、政治の実権を握ることを構想していた。これに対し、井上は政権構想やプランニングの積極的放棄を志向した。井上が捉えた国体論では、天皇の大御心に随順することが重要であり、自らの政治構想の実現を模索することは「はからい」や「さかしら」の露出として忌避された。そのため設計主義的改造を志向する大川を遠ざけ、最終的には厳しく批判するに至った。『血盟団事件』では、昭和維新運動の中にある国家構想の相違に注目し、その多元的な位相を明らかにした。 また、大川のアジア主義について研究を進め、『アジア主義―その先の近代へ』(潮出版社)の執筆を行った。原稿は概ね完成し、2014年6月に公刊される予定である。これに関連して「アジアの脱植民地化と帝国日本―タゴール・ブームと野口米次郎」(『岩波講座・日本の思想 第三巻』、岩波書店)を執筆した。 さらに、大川と同世代の「煩悶とナショナリズム」の関係をテーマとした『岩波茂雄―リベラル・ナショナリストの肖像』(岩波書店)も公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進み、業績を積み重ねることができた。著書『大川周明』の刊行に向けて、土台が固まりつつある。 ただし時間的な制約などにより、海外での文献調査に余地を残している。今年度は韓国・中国などでの調査を進め、研究の完成を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に従い、成果の発表に務める。予算は予定通り、資料収集に伴う旅費ならびに書籍購入、資料館でのコピー代に使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ計画通り使用したが、発注した書籍の一部に品切れや絶版があったため、それらの購入が平成26年度にずれ込んで残額が生じた。 すでに古書での手配を済ませており、入荷次第その支払いに充てる予定である。
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Research Products
(4 results)