2014 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本のアジア主義における思想と運動の連鎖-大川周明とその関係者を中心に
Project/Area Number |
24730108
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中島 岳志 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40447040)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大川周明 / アジア主義 / 超国家主義 / 不二一元論 / 下中彌三郎 / 大亜細亜協会 / 世界連邦運動 / 東アジア共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
大川周明の中心思想であるアジア主義について研究をまとめた。アジア主義については、個別の思想家についての研究は多く存在するものの、その全体像を捉えようとする議論はなかなか見当たらない。いまだに1960年代の竹内好の論考(「日本のアジア主義」)に依拠しているのが現状である。この状況を打破し、新たな視座を持ったアジア主義研究を提示すべく2冊の著書を刊行した。 まず『アジア主義―その先の近代へ』という単著を出版した。ここではアジア主義の広域的思想連鎖に注目し、不二一元論を軸とする思想的アジア主義の形成過程を論じた。また、東アジアだけでなく東南アジア・南アジア・中央アジア・イスラーム圏の思想家たちとの思想連鎖・交流を分析し、近代アジアというコンタクトゾーンにおける大川周明の位相を明らかにした。その上で、アジア主義が帝国主義へと転化した逆説的論理構造を明示し、大川周明の問題を追究した。さらに、近年の「東アジア共同体」論の課題と問題を論じ、アジア主義の今日的可能性への提言を行った。 また、『下中彌三郎―アジア主義から世界連邦運動へ』という単著を出版した。下中は大正デモクラシー期の労働運動・自由主義教育運動で活躍した人物で、1930年代には大亜細亜協会を牽引するアジア主義者として活躍した。大川周明とも親交が深く、同志的存在として共に活動を展開した。戦後は世界連邦運動を牽引し、平和運動を展開した。大正デモクラシー・革新的労働運動・アジア主義・農本主義・超国家主義・世界連邦構想が連続する思想的論理構造を明らかにした。 他にも「超国家主義と日蓮思想―最後の高山樗牛」(末木文美士編『現代世界と日蓮(シリーズ日蓮・第5巻)』、春秋社、近刊)などの論文を執筆し、超国家主義とアジア主義の関係について論じた。
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Research Products
(4 results)