2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本の環境NGOの政治学的研究―自然保護問題(特に捕鯨関係)を中心に―
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24730111
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野村 康 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (00360793)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 圧力団体 / 環境運動 / 自然保護 / NGO / 捕鯨 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度(第四事業年度)は文献調査及び、自然保護・動物保護分野の活動家(元グリーンピース職員、元WWFジャパン職員ほか)に対して、国内の反捕鯨運動の展開や国際的な運動との相違について聞き取り調査を行った。 また、調査データを分析・考察して、学会発表(ヒトと動物の関係学会第22回学術大会)と論文の投稿を行った。(論文については現時点で審査中。) テーマとしては、日本における反捕鯨団体の発展過程を例に日本の環境政治過程の特性を考察するものであり、本科研費研究課題「日本の環境NGOの政治学的研究―自然保護問題(特に捕鯨関係)を中心に―」の成果の中核に位置づけられるものである。 具体的には、日本と同様に捕鯨国で、反捕鯨活動や関連団体が発展しなかったノルウェーの先行事例研究に基づき、日本の政治文化がどのように反捕鯨団体の成長や戦略を規定したかを考察した。その結果、衝突を避ける日本の政治文化の中で、海外の反捕鯨団体による過激な敵対的抗議行動がネガティブな印象をもたらしたことや、捕鯨と日本のナショナル・アイデンティティが接合されたことにより、反捕鯨運動が阻害されたことなどを明らかにした。 日本の反捕鯨運動が発展しない理由としてはこれまで、日本と外国の環境観・動物観の相違が示唆される程度であった。しかし本研究では、政治的環境が環境・動物運動に大きな影響を与えていることを示し、日本の環境NGOの思想や戦略などを理解する上で重要な知見を提供するとともに、ナショナル・アイデンティティと自然保護の関係など、今後の研究の方向性についても有益な示唆を得ることが出来た。
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