2014 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける情報公開法の制定過程に関する比較政治学的研究
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24730114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊賀 司 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (00608185)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 情報公開法 / 情報アクセスの自由 / 東南アジア / トランスナショナル・ネットワーク / 政治的機会構造 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア諸国の情報公開法の制定過程に注目して法律の制定を促進したり阻害する要因を明らかにすることを目的に研究を進めた。平成26年度には前半で前年度に積み残していたインドネシアとマレーシアのスランゴール州でのインタビューと資料収集を実施し、年度後半でこれまで得られたデータの分析、学会発表、論文執筆を進めた。その結果、以下の研究成果を得た。 まず、情報公開法制定と同時進行で情報の機密化を強化する法律の制定が進められており、情報公開法制定に至る政治過程は真空の中で進められたり、単線的なものであったりするのではなく、情報の公開と機密化をめぐる諸アクター間での政治的綱引きの下で法律制定が進んだことが明らかになった。第二にこうした綱引きの下で最終的に情報公開法制定に至ったのはそれぞれの国の政治的機会構造の変化と複数のNGOが連合した社会運動によるアドボカシー活動の役割が大きかったことが明らかになった。第三に情報公開法制定を推進した政治家のリーダシップおよび、彼らとNGOや社会運動との間に従来から存在するネットワークの存在が法律制定に重要であったことが明らかになった。第四に情報公開法制定では反対する官僚組織との対立が明らかになった。第五にマレーシアの事例に限定されるが、情報公開法の制定過程が与野党間対立だけではなく、連邦政府と州政府との間に従来から存在する構造的対立の問題に収斂していったことが分かった。第六に既存研究で指摘されているようにトランスナショナルな社会運動/NGOが国内の運動と連携し、情報公開法の法案作成や国内活動家への教育・財政的支援に乗り出している実態は確かに見られるが、上記の国内要因と比較すればそれが法律制定過程で決定的な影響を与えたといえないことが明らかになった。 10月には以上の考察に基づいた日本政治学会(早稲田大学)での学会報告を行った。
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