2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730119
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
堤 英敬 香川大学, 法学部, 教授 (20314908)
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Keywords | 候補者選定 / 政治的リクルートメント / 政党組織 / 公募 / 予備選挙・党員投票 |
Research Abstract |
本研究は、日本の主要政党における候補者選定過程が「開放」された要因や、それが政党政治に与える影響について、量的アプローチ、質的アプローチの双方から分析するものである。 平成25年度においては、まず、前年度作成した候補者選定に関するデータセットを用いて、日本の主要政党における公募の実施状況や、候補者公募の普及が選挙過程や政党政治にもたらす影響について、共同研究者とともに包括的な検討を行った。その成果は、アメリカ政治学会で報告された。その後、候補者選定過程の開放がもたらす政策的な影響(候補者の政策的立場)について、民主党の公募が党本部レベルで実施されるのが一般的であるのに対して、自民党は党地方組織のレベルで自律的な公募が行われていることに注目して計量的な分析を行い、その成果を論文にまとめた。これは、英文ジャーナルへの掲載を目指している。 また、質的なアプローチからの分析を行うために、自民党愛知県連と高知県連の事務局長に対してインタビュー調査を行った。両県連は、比較的早い段階から公募や党員投票による候補者選定を行ってきた自民党地方組織である。両県連に対しては、公募や党員投票が導入された過程、特定の公募条件や候補者決定方法が採用された背景、公募候補者と従来型の方法で選ばれた候補者の考え方や選挙運動スタイルの違いなどについて尋ねたが、大変有益な情報を得ることができた。 このほか、前年度に作成した公募の実施状況に関するデータセットの補完作業を行った。具体的には、2013年参院選の候補者選定過程を中心に、公募の有無や党員投票の有無、候補者決定方式、候補者の属性などに関して、前年度中に収集できなかった情報の収集を行い、量的なデータへの変換を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、近年の日本の主要政党における候補者選定過程の「開放」が、政党政治のいかなる変化を反映しているのか、今後の政党政治にいかなる影響を及ぼすのかを、量的なアプローチと質的なアプローチを併用して明らかにすることを目的としている。 平成25年度は(1)公募等の候補者選定過程の変化が選挙過程や政党政治にもたらす影響についての包括的な検討、(2)開放的な候補者選定と政党執行部の集権性の関係に関する計量的な分析、(3)自民党地方組織を対象とした候補者選定の事例研究を行うことを予定していた。 (1)については、自民党と民主党の公募導入の過程と特徴、両党の公募で選定された衆院選候補者の経歴、政策的立場、国会における活動などを論じた論文を作成し、学会報告を行った。また、(2)については、政策的な凝集性という観点から、すなわち公募で選ばれた候補者と伝統的な方法で選ばれた候補者の政策的立場の違いについて分析を行った。その結果は論文にまとめられており、学術雑誌への掲載を目指している。(3)については、公募の実施に関して特徴的な自民党地方組織へのインタビュー調査を実施したが、まだ情報を蓄積する段階に留まっており、具体的な成果を出すまでには至っていない。このように、(1)(2)については当初の予定どおり進展させることができたが、(3)については当初の見通しから考えるとやや遅れている。しかし、全般としては、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は、開放的な候補者選定方法と候補者の政策的立場との関係について研究を行い、一定の成果を得た。そこで平成26年度は、自民党を中心に公募が導入された要因や選挙区間の公募方法の違いを明らかにするための分析を行う。 第一に、前年度までに整備した量的なデータセットを用いた分析を行う。自民党は、2004年から党本部が党の組織改革の一環として公募による候補者選定を進めてきたが、自民党の候補者選定は伝統的に党地方組織が主導して行われており、公募に関しても、実施の有無や公募の方法については、党地方組織が決定してきた。そのため、比較的早い段階で公募による候補者選定を行った選挙区もあれば、公募による候補者選定が原則化された2012年まで公募を行わない選挙区もあった。こうした違いが生じた要因としては、選挙に関する要因(得票水準と変化)、党組織に関する要因(各地方組織の党員数や執行部の構成)、選挙区における政策的志向などが考えられるが、これらの影響について量的な分析を行い、その結果を10月に開催される日本政治学会研究大会で報告する予定である。 第二に、公募が導入された要因に関する質的な研究を行う。具体的には、幾つかの県連を取り上げ、各県連において公募等の開放的な候補者選定方法が採用されるに至った過程について分析を行う。そのため、前々年度、前年度に引き続き、自民党地方組織に対するインタビュー調査を実施する。なお、当初の計画では事例を絞り、同じ県連に複数年度に渡ってインタビューを行う予定であったが、候補者選定過程が変容してきた背景には各地方組織でかなり多様性があることが分かったため、調査対象の県連を増やすこととした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度は、ワシントンDCで開催されるアメリカ政治学会で報告を行う計画があった。これはもともとの研究計画には盛り込まれていなかったが、共同研究者からの提案を受けて企画を立案し、報告公募に応募していたものである。平成25年度については、平成26年度にアメリカ合衆国に渡航・滞在するための費用を見越して、インタビュー記録のテープ起こしを行わないなど研究費の執行を抑制したため、次年度使用額が生じることとなった(ただし、応募していた企画が不採択となったため、現時点ではアメリカ合衆国への渡航は白紙である)。 本年度は、候補者公募の導入の要因及び異なる候補者選定方法が採用される背景についての、量的・質的研究を行う。量的に研究に関しては、データセットは既に完成しているが、特に党地方組織に関するデータについて、研究補助者も使いながら拡充を図っていく。また、このデータを用いた研究の成果は、早稲田大学で開催される日本政治学会の研究大会で報告する予定となっている。質的研究に関しては、3つの自民党県連に赴き、インタビュー調査を実施する予定である。現在のところ、インタビュー先は、宮崎、栃木、鳥取県連を予定している。また、インタビューの内容はテープ起こしを行い、記録に残しておく。これに加え、前々年度、前年度から引き続き、候補者リクルートメントや政党組織に関する文献の収集も行っていく。
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Research Products
(1 results)