2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
砂原 庸介 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40549680)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地方政治 / 政党 / 中央地方関係 / 地方分権改革 / 選挙制度 |
Research Abstract |
平成24年度は、中央公論新社から単行本として『大阪 大都市は国家を超えるか』を公刊したことが最も大きな成果である。本書は、日本有数の大都市である大阪の歴史をたどりながら、大都市における地方政治と国政の連関についての分析を行ったものである。 本書では、単純に大都市・大阪の歴史を叙述するだけではなく、大阪の政治を規定する日本の地方制度や選挙制度、そして政党システムを検討し、戦後の自民党長期政権の中で大都市が非常に大きな制約を受けつつ、その状況を打破できなかったことを明らかにした。この分析を踏まえることで、近年の地方政治において、橋下徹大阪市長や河村たかし名古屋市長のように、地方議会において多数派を獲得しながら選挙に臨み、国政においても影響力を発揮しようとする市長たちが出現しているが、このような市長たちがなぜ現在出現することになったのかについて説明することが可能となった。 さらに平成24年度には、本書以外にも、政党の地方組織を分析した成果を挙げることができた。まず、全都道府県議会議員を対象とするサーベイ調査を用いて、都道府県議会議員が国会議員や首長、市町村議会議員とどのような関係性を構築しているか検討した。従来想定された国(自民党)と地方の結節点としての役割を果たす議員だけではなく、国政志向の強い議員や、他のレベルの選挙と関わりを持たない議員の存在を明らかにし、それが選挙における自律性に起因することを議論した。これは『レヴァイアサン』51号に「マルチレベル選挙における都道府県議会議員」として掲載された。 さらに、自民党・民主党の地方組織へのヒアリング・アンケートから日本の地方組織の特徴を検討した。単に両者の特徴を記述するだけでなく、比較政治学的な観点から、日本の政党地方組織のあり方を考察したものである。これは、東洋経済新報社から刊行が予定される単行本に収録される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年間のうちに単著の執筆が完了したことは、予想外の達成度であると考える。特に、大阪という都市については、現状の政治的状況のみならず、歴史的に遡って多くの資料を収集し、都市政治の観点から政党システムについて分析する手掛かりを得た。さらに、単著だけではなく、論文を2編執筆することもできており、研究の進展としては極めて順調である。 しかしながら、単著に集中して、大都市の中でも大阪に関する分析は極めて進展したものの、その他の大都市、特に戦後政令指定都市に指定されていったような大都市についての分析やデータセットの構築が当初の予定ほどには進まなかったと考えられる。これらの大都市については、近年の政治的状況をめぐるデータを収集しつつあるものの、具体的なデータセットの構築を行わなくてはならない。 また、もうひとつの研究のポイントである首長の国政との関係についても、近年の大阪市長や名古屋市長については十分に研究が進められたものの、1990年代の動きについての検討をまとめるところまではいかなかった。 以上のように、一面において予想外に研究が進展したところがあるものの、その分外の作業に割く時間が減ることで予定ほどに研究が進展していないところもある。全体としてみれば、おおむね順調に進展していると評価したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、まず政令指定都市を中心とした大都市の地方政治と国政の関係についての分析を深めることを目指す。大阪という大都市のみならず、より多くの大都市について議論することが可能となるようなかたちで理論枠組みを精緻化し、地方政治・都市政治の観点から政党システムの制度化について検討していく。 特に注目するのは、地方からの国政への過剰代表(overrepresentation)の問題である。最近では、メキシコやアルゼンチンなど南米の国家を分析対象として、国政における地方の代表のされ方と、地方政治あるいは地方の政党システムが強く結びついていることが主張されている(Gervasoni, C. [2010] "A Rentier Theory of Subnational Regimes," World Politics, Gibson, E.L. and J. Suarez-Cao [2010] "Federalized Party Systems and Subnational Party Competition," Comparative Politics, Gibson, E.L. [2013] Boundary Control, Cambridge UP.など)。このような最近の先行研究を踏まえながら、国政と地方政治の政党システムの相互作用を捉えつつ、日本を中心的な対象として政党システムの制度化についての分析を進めていく。この成果については可能なかぎり早い段階で海外の学会等で発表することを目指す。 さらに理論モデルの構築と並行するかたちで研究の取りまとめを行う。1990年代以降における首長と地方議会の対立を軸とした地方政治の再編成についての研究と,本研究における国政と地方政治の連関に注目した研究を,政党システムの制度化という概念のもとで,単著で包括的に取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(4 results)