2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730124
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
礒崎 敦仁 慶應義塾大学, 法学部, 講師 (40453534)
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Keywords | 北朝鮮 / 金正日 / 政治体制 |
Research Abstract |
研究第二年度となる平成25年度は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)が冷戦終結に対していかに体制崩壊の危機を乗り越えようとしたのかを中心に検証を進めた。まず、党よりも軍を重視する「先軍」体制への転換過程について考察を深めた。冷戦終結に対する危機意識から、朝鮮労働党を中心に据えた体制運営の在り方に変化が生じ、1993年12月以降は、半年に一回以上開催するとされる党中央委員会が2010年9月までの17年間あまり一度も開催されないという異常事態が発生した。また、1991年には金日成主席存命中に最高司令官ポストが禅譲され、その後には主席制を廃止して国防委員会中心の国家運営が図られた。冷戦終結と「先軍」体制確立の因果関係について、最近公表されたばかりの「労作」を元外交官や軍幹部といった多様な脱北者の証言、新資料を丹念に突き合わせることで実証する作業となった。北朝鮮側の一次資料については、従来資料からの書き換えの有無、脱北者への意見聴取については彼らの証言内容が包含するであろうバイアスを十分に考慮した。さらに、外交政策の変化についても若干の整理を進めた。核開発を進め、対米直接交渉によって体制護持を模索したほか、ソ韓、中韓国交正常化によって孤立感を深めた北朝鮮は日本や台湾に急接近した。すなわち、ここでは冷戦終結が北朝鮮政治体制に与えた影響という一方通行の考察ではなく、北朝鮮内政と国際環境との相互作用についても検証を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題申請時に想定していなかった重要な新資料を入手することができたため、深奥でオリジナリティのある分析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
北朝鮮の冷戦崩壊認識、ならびに北朝鮮がいかに体制崩壊の危機を乗り越えようとしたのかについての検証を継続する。そのうえで、最終年度となる平成26年度は、分析枠組みの妥当性を再検討する。近年、非民主主義体制に関する横断的・理論的研究は進展を見せているが、その中で北朝鮮に援用可能と考えられる体制モデル、概念の妥当性を引き続き検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第二年度は新資料の検証に集中し、申請時よりも旅費の支出が低額となったため、研究費を有効活用すべく、一部を最終年度に持ち越すこととなった。 北朝鮮の一次資料については、大学図書館等で閲覧できるものが限られているため、消耗品費の中でも購入予算額が大きくなることが予想される。また、地域研究の一環として、聞き取り調査を目的とした国外出張を実施する計画である。
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Research Products
(3 results)