2014 Fiscal Year Research-status Report
新しい社会的リスクの比較政治経済学:党派性に着目した子育て・労働市場政策の分析
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24730127
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
稗田 健志 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (30582598)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 比較政治学 / 比較政治経済学 / 比較福祉国家論 / 新しい社会的リスク / 政党政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、経済・社会構造の脱工業化に伴って顕在化してきた「新しい社会的リスク」への政策対応、有権者の政策選好の多様化を反映して多元化の進む政党政治が与えてきた影響を探り、その作業を通じて、脱工業化の下での政党競争空間の変容を理論化してきた政党システム論の研究成果を福祉国家研究に応用し、近年の福祉国家の再編成の規定要因を明らかにすることである。 2014年度は一年間、育児休業を取得したため、研究状況の進展はなかった。しかし、2013年度までの研究成果をまとめた論文を二本、邦語の学術雑誌に公刊した。具体的には、先進工業21ヵ国における育児休業法制の導入時期を計量分析した論文を『レヴァイアサン』に発表し、欧州6ヵ国(スウェーデン・オランダ・ドイツ・フランス・イタリア・イギリス)における非就業者の割合とその所得水準の時系列変化を分析した論文を『社会政策学会誌』に発表した。前者では、再分配上の左右軸および社会的価値をめぐる社会的保守・リベラル軸から形成される二次元政党競争空間上の政権の政策位置が有給育児休業制度、長期の無給育児休業制度、および男性向け育児休業制度の導入に影響を与えていることを明らかにした。後者では、ルクセンブルグ所得調査のデータを用い、新自由主義の言説とは裏腹にオランダを除けば非就業者が一貫して減少している傾向はみられないこと、ただし、非就業世帯における社会保障給付による所得代替率は低下傾向にあり、西欧福祉国家といえでおも非能力主義的平等主義が想定するほど就労で貢献せずとも生活が保障されるという段階にはないことを明らかにした。 2015年度は2014年度に計画していた課題を遂行し、本研究課題の成果をとりまとめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2014年度に一年間の育児休業を取得したため、研究課題を遂行できなかったから。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は「再分配次元における左右軸」および「社会的価値次元におけるリバタリアン-権威主義軸」という二つの政策次元における政党の政策位置を政党の政権公約をもとに把握し、政権の政策位置の時系列での動向を推定した。また、それを説明変数として用い、公的保育支出の対GDP比に対する政党政治の影響を計量分析した。2013年度は、二次元政党競争空間上の政権の政策位置が積極的労働市場政策や産前・産後休業および育児休業制度に与える影響を計量分析した。本研究課題の最終年度にあたる2015年度は、労働市場政策の分野では積極的労働市場政策に加えて雇用保護法制の変化の分析も行う。また、子育て支援施策の分野では、公的保育支出、育児休業制度、および児童手当の分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
平成26年4月1日より平成27年3月31日まで育児休業を取得したため、本科学研究費助成事業により補助されている研究プロジェクトの遂行を平成26年度の一年間休止したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第一に、研究発表や意見交換のために、国内外の学会研究大会への参加を行う。このような学会・研究会に対する参加費や旅費に支出する。 第二に、研究を遂行するうえで必要な情報を収集するため、国内外の文献の収集に支出する。 第三に、その他として、研究を進める上で必要な英文校正費、抜き刷り作成費、郵送費、プリンタートナー、文房具類などに支出する。
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Research Products
(4 results)