2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730129
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
久保 慶一 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (30366976)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 比較政治学 / 民主主義の質 / 汚職 / 国際研究者交流(クロアチア) / 国際研究者交流(セルビア) |
Research Abstract |
本研究は、「民主主義の質」に関する比較政治学の理論的蓄積を分析枠組みとして用いつつ、旧ユーゴスラビア諸国における民主主義の質の推移と現状についての事例分析・比較分析を行うことを目的とする。そのための分析材料となる基礎的なデータや資料を収集することを主眼とする「現地調査の実施期間」と位置付けられる平成24年度は、当初の研究計画に基づき、9月にクロアチア、3月にセルビアを訪問し、現地調査を実施した。クロアチアでは、国会議員、政党関係者(事務局職員)、官僚、研究者等への聞き取り調査を実施し、またクロアチアの国立図書館を訪問して資料収集を実施したほか、多数の書籍・文献資料を収集し、クロアチアにおける民主主義の質の現状について多数の知見・データを得ることができた。またセルビアでも、国会議員、政党関係者、汚職対策機関の責任者、ジャーナリスト、NGO関係者、研究者等への聞き取り調査を実施し、多数の書籍・文献資料を収集し、セルビアにおける民主主義の質の現状について多数の知見・データを得ることができた。EU加盟を目前に控えたクロアチアでは、汚職容疑でのサナデル元首相の逮捕など、民主主義の質を高めるための努力が続けられているが、汚職は依然として深刻であるとみなされており、公職者に対するNGOやジャーナリズムによる監視が十分とはいえない現状が明らかとなった。5月の選挙で政権交代があったセルビアでは、元極右政党の政権奪取によって民主主義の質が低下する危険があったが、3月の現地調査では、政権交代にもかかわらず汚職対策の強化に向けた改革が進展しつつあること、しかしながらジャーナリズムやNGOによる公職者の監視は依然として脆弱であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成24年度にすべての旧ユーゴスラビア諸国を訪問する予定であったが、予期せぬ経緯で平成24年度から本務校にて常務者職を担当することになり、すべての国で現地調査を実施するための十分な時間を確保することが不可能となってしまった。そのため、平成24年度中に訪問して現地調査を実施することができた国はクロアチアとセルビアの2ヶ国のみとなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
本務校で常務者職を担当する状況は平成25年度も変わらないため、すべての国を訪問して現地調査を実施する時間を確保することは依然として困難であることが予想される。そのため、旧ユーゴスラビア諸国からの参加者が集まる国際会議への出席によって、多数の国についての聞き取り調査を効率的に実施したり、現地の研究補助者を雇用して資料収集を委託したりするなどの工夫を行うことが不可欠であると考えている。適宜こうした工夫を行うことにより、当初の計画どおりに調査を進めていくよう努力したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の理由により、平成24年度に現地調査のために訪問できる国の数が当初よりも少なくなってしまったため、平成24年度の研究費には残額が生じることになった。この残額については、旧ユーゴ諸国からの参加者が集まる国際会議への出席の参加費用に充当することを予定している。これにより、平成24年度には現地調査を行うことができなかった国々に関する聞き取り調査・資料収集を進めることを目指したい。こうした国際会議への出席に加えて、平成25年度中に少なくとも旧ユーゴ諸国のうち2ヶ国~3ヶ国は訪問し、現地調査を実施することを予定している。
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