2012 Fiscal Year Research-status Report
日本の「非核」政策の形成過程における政治・外交・社会運動の相互作用の実証研究
Project/Area Number |
24730136
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
黒崎 輝 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (00302068)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本年度は史資料調査を進めながら、研究成果の一部を発表した。 史資料調査は国内外で実施した。9月には英国の国立公文書館で外交文書の調査を実施した。研究対象とする1950年代から60年代にかけて日英間では核実験問題が懸案となる一方、原子力協力が進められた。英国の外交文書はその実態の解明に資するものであり、有意義な調査となった。また、国内では国会図書館で関係文書や二次資料の調査を行った。購入した図書は原水爆運動に関する貴重な一次資料であり、その活動の調査に利用した。 資料調査と並行して、研究成果の公表にも努めた。日本の科学者の核抑止政策批判に関する雑誌論文1件は、別の研究プロジェクトの成果であるが、研究対象とする時期やテーマは本研究と重なる部分が大きく、本研究の進展にも寄与するものとなった。もう1件の論文は、冷戦期の日本の核軍縮・不拡散外交を扱った論考であり、本研究の成果が反映されている。また、50年代の日本の原子力政策への物理学者の関わりについて学会報告を行った。海外の英文雑誌に論文を発表するための準備も進め、その校正費用のために本研究費を活用した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画の通りにはいかない面もあったが、研究計画全体を通して言えば、着実に研究を進めることができた。 本年度は、研究全体の分析枠組みを固めるために必要な一次・二次資料の調査を進めながら、個別の研究テーマについて部分的に成果を発表するための準備をする予定であった。本研究は様々な核問題をめぐる日本の政治・外交・社会運動の相互作用に関する実証研究をめざしているが、核実験問題と原子力開発に特に重点を置いた。 分析枠組みについては、これまでの報告者の研究や他の先行研究をベースに検討を進めた。そのために前記の概要で述べたとおり、国内外で史資料調査を行った。その成果は、冷戦期の日本の核軍縮・不拡散外交に関する論文の作成に活かされた。ただ、当初予定していた原水禁運動に関する国内史料調査を実施することができなかった。そのため、原水禁運動に関する実証的な研究をさらに進める必要があり、その成果に基づいて分析枠組みの構築を進めたい。 個別の核問題に関する研究は、概ね計画通りに進めることができた。英国での調査を通じて、核実験をめぐる日英関係と日本の国内政治、日本の原子力開発と日英原子力協力に関する有益な史料を収集・調査できたことは特に有益であった。原子力開発に関する研究成果を発表するための準備も進め、その一部は学会で報告した。核実験禁止問題に関する研究成果の発表準備も進めたが、原水禁運動に関する史料調査を踏まえて、成果を発表する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き、史資料調査を進めながら、研究成果をまとめ、公表することに努める。 史資料調査は日本国内外で継続する。次年度からは米国での史料調査を行う。米国の政府文書は、核問題をめぐる日本の政治と外交の実態を解明する上で不可欠の一次資料であり、米国での史料調査を通じて本研究の進展を図りたい。日本国内では、外務省外交史料館所蔵の外交文書や原水禁運動に関する史料の調査を行う。日本側の一次資料を積極的に渉猟することで、本研究の実証研究として水準を高めることを目指す。 研究成果をまとめる過程では、共同研究や学会報告を積極的に活用する。次年度から研究分担者として参加する共同研究は、本研究とも関わる部分があり、共同研究を通じて他の国際政治や外交史の研究者から得られるフィードバックは、本研究の遂行にとって有益なものになろう。また、次年度は本研究の成果の一部を学会で発表する予定であり、そこから得られた助言や批評を本研究の発展に活かしたい。 こうした取り組みと並行して、研究成果を公表する準備を進める。上記の共同研究や学会報告はその一助となると期待できる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
史資料調査と研究成果の公表の準備のために研究費を使用する。 まず、米国での史資料調査を春と夏の2回実施し、その旅費に研究費を当てる。調査先は米国立公文書館2号館(カレッジパーク、メリーランド州)、米議会図書館(ワシントンDC)、National Security Archive(ワシントンDC)を予定している。 日本国内でも史資料調査を継続する。調査先としては、国会図書館、外務省外交史料館、大原社会問題研究所、学術会議図書館を予定している。そのための旅費や調査先での文献複写費などに研究費を使用する。 その他の研究費の使途として、研究テーマに関連する資料集その他文献の購入や、研究の遂行に用いる各種の消耗品、研究発表のための学会参加費を予定している。
|