2013 Fiscal Year Research-status Report
日本の「非核」政策の形成過程における政治・外交・社会運動の相互作用の実証研究
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24730136
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
黒崎 輝 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (00302068)
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Keywords | 国際政治史 / 政治外交史 |
Research Abstract |
本年度は史資料調査を進めながら、研究成果を発表する準備に取り組み、その一部は学会報告の形で公表した。 史資料調査は国内外で実施した。9月には米国立公文書館(カレッジパーク、メリーランド州)で米政府文書の調査を行った。今回の調査では1950年代中葉の日米関係に関する文書群を調査対象とし、主に1954年3月のビキニ事件に関連する文書群、並びに日本の原子力開発と日米原子力協力に関する文書群を調査した。これらは、核実験問題や原子力をめぐる日米両国の政治外交過程や二国間関係の実証的な解明に不可欠の史料であり、本研究の遂行にとって有意義な調査となった。日本国内では外務省外交史料館にてビキニ事件及び日米原子力協力に関する文書群を調査し、国会図書館にて二次資料の調査を行った。また、関連する図書及び資料集の購入にも研究費を当てた。 史資料調査と並行して、研究成果の取りまとめにも努めた。日米原子力協力に関する研究の成果の一部は、10月に開催された日本国際政治学会の年次研究大会にて発表した。その後、この研究報告をもとに論文を作成し、学会誌に投稿した(本年度末時点で掲載未定)。さらに今年度は、ビキニ事件をめぐる日米関係に関する研究成果も論文にまとめることができた。これは次年度に雑誌論文として公表される予定である。これらの研究報告や論文の作成を並行して、本研究全体を取りまとめるための準備も鋭意進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通りにはいかない点もあったものの、研究計画全体を通していえば、着実に研究を前進させることができた。 本年度は、前年度の研究成果を踏まえ、研究全体の分析枠組みを固める作業が進んだ。本研究は様々な核問題をめぐる日本の政治・外交・社会運動の相互作用に関する実証研究を目指しているが、史資料調査で得られた知見に基づき、それを分析するための枠組みの構想を練り上げることができた。 さらに、本年度は1950年代中葉までの時期を対象として、具体的な二つの核問題、すなわち、ビキニ事件と日米原子力協力を取り上げ、それらをめぐる日本の政治・外交・社会運動の相互作用について、実証的な解明を進めた。その際には日本国内外で調査収集した史資料に依拠しつつ、前述の分析枠組みに基づいて考察を進め、研究成果を論文の形で公表する準備に取り組んだ。これにより、本研究が扱う1950年代から1960年代前半の時期の核問題をめぐる日本の政治・外交を新たな視点から捉えなおす上で、その分析枠組みを用いることが有意義であるとの感触を得ることもできた。 こうした作業と並行して、そのための様々な核問題に関する史資料の調査収集も進めることができた。本研究独自の分析枠組みを使いながら、1950年代後半以降の時期の日本の政治・外交について実証的解明と考察を進めるための下準備が整ったことも、今年度の重要な成果である。 その一方で当初予定通りに進まなかった点もある。まず、日本の原水禁運動に関する史料調査を行うことができなかった。また、米国立公文書館で調査すべき文書群が大量にあり、同時期に米議会図書館で予定していた史資料調査は実施を取りやめることにした。これらは次年度以降の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き、史資料調査を進めながら、研究成果をまとめ、公表することに努める。 史資料調査は日本国内外で継続する。次年度は米国での史資料調査を行う。米国の政府文書は、様々な核問題をめぐる日本の政治と外交の実態を解明する上で不可欠の一次資料であり、今年度に引き続き米国での資料調査を通じて本研究の進展を図りたい。日本国内では、外務省外交史料館所蔵の外交文書や原水禁運動に関する史資料の調査を行う。日本側の多様な一次資料を積極的に渉猟することで、本研究の実証研究としての水準を高めることを目指す。核をめぐる日本の政治・外交を多角的に分析する点に本研究の特色があり、そのためにも、これらの史資料調査を丹念に行うことが必要である。 研究成果をまとめる過程では、共同研究を積極的に活用する。今年度から研究分担者として参加している共同研究は、本研究のテーマと関わる部分があり、この共同研究での研究報告に対して、他の研究分担者から得られたフィードバックは、本研究の遂行にとっても有益なものであった。この機会を今後も有効に活用しながら、本研究に取り組むことにしたい。 こうした研究活動と並行して、研究成果を公表する準備を着実に進める。次年度は二つのテーマ、すなわち、核実験をめぐる日本の政治・外交と日本の非核兵器政策の形成に焦点を合わせ、調査収集した史資料に依拠して、研究論文の作成や研究報告の準備を進める。その成果を土台として、次々年度以降、本研究全体を取りまとめるための作業に本格的に着手することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、今年度予定していた図書の購入を見送ったため。 来年度の図書購入に充てる。
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