2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24730137
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
草野 大希 埼玉大学, 教養学部, 准教授 (90455999)
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Keywords | アメリカの介入政策 / リベラリズム / ウィルソン主義 / 人道的介入 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1910年代に米国のウィルソン大統領が中南米諸国(メキシコ、ハイチ、ドミニカ共和国)に対して実施した介入主義的な政策を、冷戦後の国際社会で顕著になった所謂「リベラル介入主義」(民主主義や人権を促進するための介入を正当とする理念および政策)の「歴史的起源」と位置づけ、その特徴ならびに可能性と限界を明らかにすることである。 最終年度の研究実績は主として二つ。第一は、1916年11月開始の米国によるドミニカ共和国の軍事占領に関する外交資料の収集・調査・分析を集中的に行い、ウィルソン政権が同国に軍政を敷くに至った理由や政治過程を検証したことである。その結果、次のような介入の特徴が明らかになった。①介入の動機として、ドミニカにおける米国の戦略上・経済上の国益を追求する面があったことは否定できないが、それよりも顕著であったのはドミニカの民主化を促進することに対するウィルソン政権の役割意識の強さであった。②ウィルソン政権は、米国の介入がドミニカの主権侵害を意味しないことを示す必要性を強く認識、その正当性に相当の注意を払っていた。③しかし結果的に、ドミニカとの間で米国の介入を直接正当化するメカニズムを形成することはできず、軍事占領は危うい正当性の下で強行、ドミニカ側の抵抗を招くことに繋がった。 第二は、上記の検証結果を、昨年度に研究を進めたハイチに対するアメリカの軍事的・財政的介入政策、ならびに1914年に実施されたメキシコに対する介入事例と比較検討し、ウィルソンの介入主義の次のような傾向を明らかにしたことである。①リベラルな目的(民主主義や人道)の真摯な追求、②相手の主権尊重を志向する正しい力の行使としての介入の模索、③それを可能にするための介入の正当性や合法性の重要性に対する強い認識、④相手国と共通利益・理念を構築することの困難さ、⑤国家建設の実効性の限界、である。
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