2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡邉 智明 九州大学, グリーンアジア国際リーダー教育センター, 助教 (00404088)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境規格 / グローバル・ガヴァナンス / 標準化 / EU / ドイツ / 国際政治 |
Research Abstract |
平成24年度は、環境規格の国際標準化に関する国際社会の動向を把握することを目指し、有害廃棄物の越境移動に関するバーゼル条約、EU(欧州連合)のWEEE(廃電子機器)指令などにおける「拡大生産者責任」の議論の動向を確認する作業を行った。この作業を通じて、各国および産業界が越境的環境リスクと産業政策の連関を視野に入れるようになっていく過程の全体像を把握することができた。また、グローバル・ガヴァナンスにおける標準化ルール形成に関する政治学、公共政策学の議論を整理し、理論的な視座の検討を行った。 具体的な作業としては、東京、関西の国立国会図書館における関連資料の収集を行った。また、ドイツ・ベルリンのドイツ連邦議会図書館、およびベルギー・ブリュッセルのヨーロッパ委員会中央図書館における文献資料調査を進め、国家レベルの環境政策において、民間レベルの標準化策定作業が意識されるようになる時期を概ね把握することができた。 これらの資料収集作業と並行して、一部研究成果を発表した。口頭発表としては、環境法政策学会(2012年6月、於西南学院大学)分科会において、バーゼル条約を契機とした環境政策の展開、「拡大生産者責任」が重視されていく背景に関して報告を行い、討論者とはじめとして意見交換を行った。また、工学、経済学、法学などの研究者からなる研究会、福岡環境学際フォーラム第5回研究会(2012年4月、於西南学院大学)において、EUのWEEE指令について報告を行い、参加者との討論を通じて有益な示唆を得ることができた。 これに加えて、グローバル・ガヴァンナンスで重要となるルール形成の政治過程に関する研究動向の整理し、その成果の一部として、『政治研究』(九州大学)第60号にT.ビューテ/W.マットリ著『グローバル経済の新たな統治者たち』の書評論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度においては、EUの国際標準化、WEEE指令などに関する政策文書や、産業界の動向を確認できる資料の収集を中心に行うことを予定していたが、国内外における政府レベルの政策文書の資料収集作業については概ね計画を達成することができた。他方で、ドイツの産業界(特にドイツ産業連盟)や電子機器製造業界などに関する資料に関しては、計画の想定よりやや狭い範囲を確認するに留まった。 また、これと関連して、次年度以降重要となる聴き取り対象者の特定を行うことができなかった。このため、平成24年度の後半において実施を予定していた一部関係者への聴き取り作業へ着手することができなかった。 平成24年度の目的である、「環境規格の国際標準化に全般の傾向を把握」という点では大きな支障ではないが、特に次年度以降重要な意味を持つ関係者の聴き取りを行うことができなかった点では、研究計画を完全に達成したという評価には至らないといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、2000年代以降の国際環境標準策定に向けた各アクターの動向、特にEUやドイツの政策当局者の選好や戦略を確認する作業を行うことを予定している。とりわけ、ドイツ連邦環境省の動向に関わる資料収集、およびEU委員会、欧州議会の動向を確認する資料収集に重点を置くこととしたい。また、前年度十分に行うことができなかったドイツ産業界の動向を確認できる資料の収集も行いたいと考えている。 このため、平成25年度前半においては、まず日本国内における資料収集作業を行う計画である。また、前年度に引き続き、ドイツ、ベルギーにおける関係資料の収集を行う予定である。このうち、ドイツについては、ベルリンの連邦議会図書館に加えて、デッサウ-ロスラウの環境局図書館を利用することを予定している。また、この間、可能であれば、EUレベルなど政策当局者に対する聴き取り作業を行いたいと考えている。一連の作業を通じて、EUに大きな影響力を持つドイツ政府の戦略や政策選好を確認し、EUレベルの政策に対する対応や影響力を考察する手掛かりとしたいと考えている。 また、重要部分に関しては、グローバル・ガバナンス学会をはじめとする学会における口頭発表や研究論文として学会誌や紀要等において公刊することを考えている。これらの発表を通じて寄せられる批判、意見を研究にフィードバックするようにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用については、まず物品費として、グローバル・ガヴァナンスに関する国際関係論研究およびグローバル・レベルの規制をめぐる事例研究などの書籍の購入を予定していいる。書籍購入を中心とした物品費には、15万円を計上する予定である。 次に、旅費に関しては、まず日本国内においては、前年度に引き続き、国立国会図書館(東京・関西)の利用を予定している。さらに、この調査と合わせて学会・研究会発表を行うことができるよう日程を調整したいと考えている。この国内旅費については、10万円の支出を予定している。 また、海外調査に関しては、ドイツ・ベルリンの連邦議会図書館およびデッサウ‐ロスラウの環境局図書館、ベルギー・ブリュッセルのヨーロッパ委員会中央図書館の利用を考えている。これを並行して、関係者への聴き取りの実施ができるよう日程の調整を行いたい。これらの海外調査では、政府関係資料の収集および関係者への聴き取りをあわせて、10日~2週間程度を充てる計画である。また、海外調査に関しては、聴き取り対象となる関係者の日程との関係で、複数回の渡航が必要となる場合も想定している。海外旅費としては、45万円程度を計上する予定である。また、外国旅費に関連して、コーディネーターその他補助者を必要とする場合、5万円程度を謝礼に充てる予定である。
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