2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730149
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
福田 円 国士舘大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10549497)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 中国 / 台湾 / アメリカ / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 外交史 / 国際政治史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中華人民共和国と諸外国の関係において、台湾問題をめぐる「一つの中国」コンセンサスが形成さ れた過程を論じる国際政治史研究を行うことである。本研究では、1960年代末から70年代にかけて、中国が西側諸国との外交 関係を回復し、国際的な地位を向上させるなかで、相手国の「一つの中国」への関与をどのように獲得したのかを、外交史的な手法を用いて跡付けようと試みている。そのうえで、「一つの中国」コンセンサス形成の過程が1973年に再開される対台湾統一戦線工作、および1979年に鄧小平によって提起される台湾への「平和統一」政策に、いかなる機会と制約を与えたのかを考証しようとしている。 上記のような研究のうち、本研究期間(2012年4月から2015年3月)においては、上記の分析対象時期全体を射程に入れた史料の開拓を継続しつつ、短期的には、中国政府が1969年に開始されたカナダとの国交正常化交渉から、米中接近、日中国交正常化を経て、1973年初頭に対台湾統一戦線工作を再開する過程を論じることが目標である。 2012年度はその前提として、研究代表者がこれまで行ってきた1960年代までの「一つの中国」原則の形成に関する研究を総括するための国際ワークショップを開催し、単著『中国外交と台湾ー「一つの中国」原則の起源』を刊行した。また、1960年代末から70年代初頭の「一つの中国」コンセンサスの形成について論じた研究成果として、日中航空協定締結に関する論考を発表した。それに加え、中国とカナダおよび西ドイツの国交正常化過程において「一つの中国」の問題がどのように議論されたのかに関する調査にも着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は、中国とカナダとの国交正常化交渉の分析を軸に、台湾海峡を取り巻く東アジア国際情勢に対する中国指導者の認識が、1960年代末にどのように変容していったのかに関する研究を行う予定であった。国府とカナダ政府の断交に関する先行研究においては、当該時期にアメリカの対中姿勢が変化し、交渉における中国の立場が有利になるに伴い、中国政府は台湾問題をめぐる条件を増加させ、態度を硬化させたことが示唆されている。1964年のフランス政府との交渉において、中国政府はカナダに提示した条件の一部しか要求せず、それについても妥協していた。それにもかかわらず、中国の指導者はカナダに対し、なぜこの三条件を提示したのか。この問いについて論じることを通じて、カナダ政府との交渉と対米接近、西側諸国との関係改善を中国の指導者がどのように関連づけていたのかを明らかにしたいと考えている。 2012年度はこの問題に関する先行研究の整理や文献調査を行うなかで、中国と西ドイツの国交正常化プロセスもこの問題と密接に関わっていることを発見した。そのため、中国とカナダの国交正常化プロセスに並行し、西ドイツとの交渉についても調査と分析を行うことを決定した。上記に関して、2012年度は所属機関の異動などに伴い長期の調査出張が叶わず、一次資料(外交文書)の閲覧と収集は2013年度の課題となってしまった。しかし、文献調査や関連領域の研究者との情報交換はおおむね順調に進められた。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記のような事情により、2013年度は外交文書の閲覧と収集が課題となっている。2013年度は中国とカナダおよび中国と西ドイツの国交正常化を軸に、米国、台湾、日本など関連する諸国の外交文書をできるだけ広範に収集し、1960年代末から70年代初頭の東アジア国際政治において「一つの中国」原則がどのように形成されたのかを、できるだけ立体的に明らかにしたい。具体的には、カナダの国立公文書館とアメリカのニクソン大統領図書館にて、比較的長期間の資料調査を行いたいと考えている。そのほか、日本の外交史料館や台湾の中央研究院や国史館で、短期の資料調査を数回ずつ行いたい。中国に関しては、当該時期の外交史料が公開される兆候はみられないので、引き続きワークショップやシンポジウムに積極的に出席し、現地研究者との協力関係を築きたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たに必要となる機器や物品、書籍についてはできるだけ早い時期に揃えたい。また、海外での報告を複数回予定しているので、その際の論文原稿のネイティブチェックに対して、謝金を支出する。それに加え、中国と西ドイツの国交正常化について調査するにあたっては、ドイツ語史料の翻訳なども必要となるため、そのための人件費を支出したいと考えている。2013年度は、上記以外の支出の大部分を史料調査のための出張旅費に充てる計画である。
|