2012 Fiscal Year Research-status Report
占領と日本「復帰」-米軍占領政策の実践からみた1951年東京と沖縄の「復帰」支持
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24730152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上地 聡子 早稲田大学, 国際教養学術院, 助手 (40580171)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 沖縄ディアスポラ / 沖縄帰属問題 / 比嘉春潮 / 与世盛智郎 / 玉代勢法雲 |
Research Abstract |
1)比嘉春潮文庫:5月と8月~9月に沖縄県立図書館所蔵・比嘉春潮文庫の1940年~1953年頃までを対象に①在東京沖縄人の政治運動、②海外沖縄人との交流、を示す資料を調査した。①に関しては東京の沖縄人組織「沖縄人連盟」関連書類の複写、熊本発行の「内報」、沖縄から送付された「沖縄の現状報告」等の資料を複写した。また在東京沖縄人の動向を推測するための補助資料として「沖縄文化」、「文化沖縄」「沖縄タイムズ」の複写も行った。②については北アメリカから送付の「救援ニュース」「会報」、ブラジルから送付の「会報」、ペルーから送付の「救援ニュース」をそれぞれ閲覧、複写した。これらの資料の意義は在東京沖縄人と国内、海外の沖縄人コミュニティとのネットワークを実証する点であり、これらの内容分析により当時の沖縄人の政治的活動の実態が沖縄サイドから明らかにできる点に資料の重要性があるといえよう。 2)ハワイと東京の関係:9月から11月まではハワイの日系紙「ハワイタイムス」に沖縄日本復帰支持を投書した与世盛智郎と玉代勢法雲の在東京沖縄人とのつながりについて、二次資料と東京発行の雑誌「おきなわ」をもとに研究をすすめた。また当時のハワイ日系/沖縄系社会をとりまく政治状況について先行研究の読み込みを行った。これらの意義は、沖縄の帰属問題が在海外沖縄人の関心をも惹いていた事実を明らかにすることであり、東京とハワイという異なる統治状況を並置して考察する点に重要性が存在する。 3)情報流通経路:11月から2月まではこれまで調査してきた一次資料と先行研究をもとに、当時の沖縄、東京、海外(ハワイ)の情報共有の実態を、郵便制度、進駐軍、引揚という3つの視座から解明を試みた。3つの地域の沖縄人コミュニティを繋ぐ制度的側面とともに、GHQや沖縄統治に携わった日系二世兵士の動態に着目した点に意義と重要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一の理由として、本研究が当初対象に含めていなかった在ハワイ沖縄人と、ハワイ・東京・沖縄の情報流通経路に関する調査に時間と資源を割いた点が挙げられる。 報告者は本研究費申請以前から在ハワイ沖縄人の調査を行ってきたが、今回、比嘉春潮文庫を調査した結果、在東京沖縄人と海外とりわけ在ハワイ沖縄人との人的・情報面の繋がりの重要性を再認識した。そのため、当該時代の沖縄帰属問題を考察する際、東京と沖縄という「日本国内」だけでなく、少なくともハワイという要因を含めて考える必要性を痛感し、年度の後半はその作業に着手した。その結果、当初予定していたGHQ占領政策関連の調査に十分な時間を当てることが不可能となった。 ただしハワイ日系/沖縄系社会と情報ルートの調査に着手した結果、GHQ占領統治に通訳兵として動員されていた二世兵士の多くがハワイ出身であった点や、彼らの回顧録や記録の読み込みを通じて占領下日本の統治/被統治双方の状況について理解を深めることができたため、当初の研究目的から大きく逸脱したとは考えていない。 第二の理由は、戦後日本政治史における沖縄研究の研究史をまとめる依頼原稿の執筆に年度の前半、時間を割いた点が挙げられる。本研究とは直接関係はないが、サンフランシスコ講和60年の節目に特集された「日本の占領」がテーマであり、また外国雑誌への掲載である点を鑑み、日本戦後史と沖縄の関連、とくにサンフランシスコ講和前後から沖縄「復帰」後に続く沖縄研究の動向に関してスペイン語圏へアピールする機会であったため、沖縄研究の今後の広がりという点では十分に意義のある作業であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
5月から7月までは、上記のハワイ・東京・沖縄の情報流通経路に関する研究を論文にするとともに、同3か所における統治状況の違いを、日本、沖縄の占領政策の観点から調査する。GHQの占領政策については①国会図書館所蔵のGHQ-SCAP文書と②全国都道府県知事会の関係資料、③参議院外務省委員会の関係資料を中心に新たな資料の発掘に着手する予定である。7月半ばに西洋近現代史研究会例会にて同調査の中間発表を行う。 8月から9月は上記3つの資料群の調査と分析をすすめる。1)在東京沖縄人の沖縄帰属に関する政治活動、2)在東京沖縄人と沖縄との連携の可能性、3)GHQ進駐軍に通訳兵として勤務していたハワイ日系(沖縄系)二世兵士の資料、の3点を柱として研究を進める。また2014年3月にフィラデルフィアにて行われるAssociation for Asian Studies(以下AAS)のパネル報告に応募する予定である。 9月から11月までは、国会図書館の琉球列島米国民政府文書の調査を行い、沖縄の米軍直接統治と沖縄帰属に関する政治運動の関係を調べる。特に、1950年代前後より生じていた「共産主義分子」の監視と帰属問題の関係について米国軍、沖縄人がどのように認識していたのか、という点に着目する。必要に応じて、沖縄県公文書館の資料も調査対象とする。 11月から1月はハワイの統治状況について米国軍側の記録、「ハワイタイムス」「ハワイヘラルド」紙面および先行研究をもとに調査をすすめる。8月から9月にかけて調査した日系通訳兵に関する知見と総合し、当時の在ハワイ沖縄人を取り巻く政治状況を考察することを目的とする。 2月から3月にかけて、3地域の統治状況についてこれまでの調査を論文にまとめる。またパネル審査を通過することが出来ればAASでその成果の一部を報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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