2012 Fiscal Year Research-status Report
「ポスト・ネオリベラリズム」時代の金融秩序のあり方ー日米英の金融制度の比較研究
Project/Area Number |
24730156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
安高 啓朗 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (90611111)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | グローバル金融秩序 / ポスト・ネオリベラリズム / 埋め込み / 政策レジーム |
Research Abstract |
本研究は、金融危機後あらためて高まった「ポスト・ネオリベラリズム」時代におけるグローバル金融秩序のあり方について、カール・ポランニーの「埋め込み」概念を一つの手がかりに、グローバル金融が社会に埋め込まれる上での制度の特性と多様性について明らかにすることを目的としている。平成24年度は研究の初年度として、「埋め込み」概念をグローバル金融の分析枠組みとして再構築するとともに、金融秩序の「埋め込み」に関する理念型である「政策レジーム」の理論的枠組の発展・深化を目標として研究を行った。 このような目的のため、本年度は二つの側面について研究を進めた。第一に、制度的配置としての「埋め込み」概念を精緻化するために、国別の多様性と密接に関係している、国際社会を成り立たせている制度枠組み、とくに主権のように国際関係を成り立たせている構成的要素である「一次的制度」としての市場について検討した。第二に、「政策レジーム」の多様性が生まれてきた歴史的経緯を考えるにあたって、歴史哲学についても一定の考察を加えた。とくに制度としての(国際)市場が近代西洋から誕生して単線的に発展してきたとするヨーロッパ中心主義的な見方について批判的に検討した。 本年度の成果としては、金融制度の比較研究を行うにあたっての、多様性の歴史的な展開を基礎づけることができた点がその意義として挙げられる。本研究の理論的貢献の一つは経済と社会を結ぶ多様な「制度的配置」に注目することであり、その歴史的な成り立ちについて、国際政治経済学において暗黙のうちに前提となっている市場の単線的発展とは異なるモデルを導出できたことは、今後の研究の発展のためにも重要であると考えられる。また、これら二つの点については、それぞれ発表する機会を得たことも、本年度の重要な成果であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗状況を踏まえた本年度の達成度については、「埋め込み」概念の理論的考察については一定程度進展できた一方で、「政策レジーム」の類型化についてはまだ検討すべき課題が残っていると考えている。 その理由としては、第一に、制度の歴史的展開の考察に力点をおいて研究を進めた結果として、「政策レジーム」を類型化する作業は遅れてしまっていること、また、第二に、関連する他の研究会にも積極的に参加したことで、本研究の進展にとって大きなプラスになっている反面、時間もとられてしまったことが挙げられる。なお、第一点の制度の比較歴史研究についての進展は、第二点の他研究会への参加が触媒となっていることから、必要なまわり道であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進については、二つの方策を念頭においている。第一に、研究上の積み残しである「政策レジーム」の類型化作業を進展させることである。とくに日米英の「政策レジーム」を特定し、その制度的特徴の仮説を導き出すことは、今後の実証部分において必要不可欠であると考えている。第二に、金融制度の比較歴史研究に向けて、一次資料の収集のための準備作業を行うことである。上述の理論的考察と仮説をもとに、具体的にはどのような一次資料を集めるのかについて、検討を進める。 これらの作業を踏まえて、夏に英ナショナル・アーカイブスにて一回目の資料収集を行いたいと考えている。その後の展開としては、資料収集にて得た情報をもとに、今後探すべき資料を検討した上で、必要とあれば理論的な修正を適宜行いつつ、研究を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成金が生じた状況としては、達成度の項目において述べた「政策レジーム」の類型化作業において必要な資料・書籍等が生じた場合に使用するため。もっとも、額としては少額のため、翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画も、当初計画とほぼ変わらないことが想定される。
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[Presentation] 中国化する日本2012
Author(s)
安高啓朗
Organizer
脱ウェストファリア史観科研研究会
Place of Presentation
立命館大学衣笠キャンパス(京都府)
Year and Date
20120721-20120722
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