2015 Fiscal Year Annual Research Report
「ポスト・ネオリベラリズム」時代の金融秩序のあり方ー日米英の金融制度の比較研究
Project/Area Number |
24730156
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
安高 啓朗 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (90611111)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グローバル金融秩序 / ネオリベラリズム / ポスト・ネオリベラリズム / 世界金融危機 / 権力/知 / 行為遂行性 / 埋め込み / 政策レジーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界金融危機後あらためて高まった「ポスト・ネオリベラリズム」時代におけるグローバル金融秩序のあり方について、カール・ポランニーの「埋め込み」概念を一つの手がかりに、グローバル金融が社会に埋め込まれるうえでの制度の特性と多様性について明らかにすることを目的としている。平成27年度は、この2-3年で大きく進展したネオリベラリズム研究を領域横断的に洗い出したうえで、本研究の理論的視座を再度位置づけ直す作業を行った。 ネオリベラリズム研究はここ数年で大きく進展している。自由放任主義としての古典的リベラリズムとは区別されるネオリベラリズムについては、社会主義計算論争に端を発して、ヨーロッパにおけるオルド自由主義、またアメリカにおけるシカゴ学派の展開など起源をめぐる研究、フーコーをはじめとするポスト構造主義の影響を受けたガヴァナンス、統治性、リスクなど実践をめぐる研究、さらには2008年金融危機と金融化をめぐる研究などが挙げられる。 こうした検討を通じて明らかになったのは、ポスト・ネオリベラリズム時代の到来よりも、むしろ世界金融危機を経てもなお強固に維持されつづけているネオリベラリズムの生命力の強さであり、オルタナティヴな構想の貧困である。さらには、新古典派経済学やその論理を取り込んで発展してきた主流派(実証主義的)国際政治経済学もこうした推移について捉えきれていない。 そこで、本研究のこれまでの成果を踏まえたうえで、1)2008年の世界金融危機以後もネオリベラリズムが支配的言説・論理でありつづけているのはなぜか、また、2)国際政治経済学(とくに主流派)がこうした状況において果たしている役割はなにか、の二点について、〈権力/知〉の観点からさらなる検討を行っている。こうした成果の一部は日本政治学会編『年報政治学』2017年度第I号で発表する予定である。
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