2012 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおける人身取引問題のガバナンスの構造と市民社会の役割に関する研究
Project/Area Number |
24730157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山根 健至 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (10522188)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / フィリピン |
Research Abstract |
当該年度は、本研究の中心対象であるフィリピンについて、同国が関係する人身取引問題の重層的ガバナンスを構成する、政府関係機関、地域機構(アセアン)、国連等の国際機関、アメリカなどの先進国といった諸アクターの取り組みとそれらの相互関連を研究した。研究は、これまでに入手している一次資料等の文献調査の実施、フィリピン・マニラ首都圏における資料収集および聞き取り調査の実施を中心とした。 当該年度の研究で、ローカル/ナショナルなレベルのガバナンスの実態には、制度や枠組みの構築は進むものの、政治的意思の欠如や汚職などにより取り組みの実効性が伴わない状況が散見されること、重層的ガバナンスがいかに実効性を有するかは、ローカル/ナショナルなレベルでの取り組み如何にかかっていることを明らかにした。ガバナンスの重層的な形成の進展に加え、ローカル/ナショナルなレベルにおけるガバナンスの機能面の実態把握、評価、課題および改善策、そしてローカル固有の事情を検討する必要がある。また、こうした研究の成果の一部を、「東南アジアにおける人身取引と『重層的ガヴァナンス』」(松下冽・山根健至編『グローバル・サウスにおけるネットワーク型ガヴァナンス』(仮)、晃洋書房、近刊)にまとめた。 本研究では、東南アジアにおいて形成されつつある人身取引問題の重層的ガバナンスにおける、グローバル-リージョナル-ナショナルの各レベルの諸制度・諸アクターについて、とりわけ市民社会アクターに焦点を当て、それらの役割や位置付けの検討をするが、当該年度の研究の重要性は、かかる重層的ガバナンスの法制度的側面を明らかにしたという点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、第1に、重層的なガバナンスにおけるグローバル-リージョナル-ナショナルの各レベルの諸制度・諸アクターの取り組み、相互関係、機能面の実態を明らかにし、政策評価、課題抽出を行うこと。第2に、ローカルなNGOや地域的・国際的なNGOの役割、連携の実態、上記ガバナンスとの関係を明らかにし、市民活動を重層的なガバナンスに有機的に位置付けるには何が求められるのかを検討することである。 当該年度は主に第1の点をフィリピンを中心として、政府関係機関、地域機構(アセアン)、国連等の国際機関、アメリカなどの先進国といった諸アクターの取り組みとそれらの相互関連研究し、重層的ガバナンスの法制度的側面を明らかにした。この点に関しては、これまでに収集した資料・データの分析を中心に研究を進め、上記の「研究実績の概要」に示したような成果を得ることができ、研究の目的を概ね達成することができた。 ただし、フィリピンとマレーシア、およびフィリピンと日本といった2国間での取り組みについては、訪問先の事情や時間的な理由から十分な調査が実施できていない。例えば、フィリピンでの調査を優先したため、マレーシアへ渡航する時間を確保することができなかった。また、第2の点に関する調査にも若干着手したが、聞き取り対象のNGOの都合により十分な調査が実施できなかった。こうした諸点については、今年度の重点研究課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、第1に、フィリピンとマレーシア、およびフィリピンと日本といった2国間での取り組みの検討、第2に、ローカルなNGOや地域的・国際的なNGOの役割、連携の実態、ガバナンスの法制度的側面との関係を明らかにし、市民活動を重層的なガバナンスに有機的に位置付けるには何が求められるのかの検討を実施する。それにより、各国のNGOやトランスナショナルなNGOがどのように連携して活動しているのか、その活動が、国家や国際機関がリージョナル、グローバルなレベルで進める協力とどのように関連しているのか、ローカル/ナショナルな課題改善にどのような役割を担うことができるのかなどを明らかにし研究の目的を達成する。 上記の点に関して、関連文献・一次資料の収集と分析、関係機関への訪問、関係者への聞き取りなどを主として、研究を進めていく。特に、フィリピンのマニラ、マレーシアのクアラルンプールに渡航・滞在し、現地調査に重点を置いて研究を推進する。加えて、研究の成果を学会報告や論文執筆によって発信していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フィリピンやマレーシアにおける訪問予定関係機関・関係者について、先方の事情により訪問できなかったことにより当該研究費が生じた。こうした関係機関・関係者については次年度以降に訪問する予定であり、それにより従来の計画より延びることとなる滞在期間に生じる諸経費、および訪問関係機関への旅費に当該研究費を充当する。
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