2013 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおける人身取引問題のガバナンスの構造と市民社会の役割に関する研究
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24730157
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山根 健至 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (10522188)
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Keywords | ガヴァナンス / 人間の安全保障 / 人身取引 / 東南アジア / 国際情報交換(フィリピン) |
Research Abstract |
当該年度は、東南アジアにおける人身取引対策の地域協力ガヴァナンスについて、特に、地域内の市民社会組織の活動や、地域内の組織と地域外の組織との連携・ネットワーク形成、それらと各政府や国際機関の活動の関係などについて検討することを目的として、フィリピンや日本のNGO、および政府機関の取り組みについての調査を進めた。これらの調査については、主に、文献資料の収集および検討、NGOが主催するシンポジウムなどへの参加による情報収集、フィリピンでの現地調査・資料収集、研究会への参加などを通じて実施した。 本研究において実態の解明を目指す人身取引対策の重層的ガヴァナンスについては、その要となるのが、NGOをはじめとする市民社会組織の取り組みであるため、それらの具体的活動や越境的ネットワークの形成状況の把握が不可欠である。当該年度は、上述の研究過程により、これらの把握や政府の取り組みとの関係についての把握がある程度進んだと言えよう。今後は、問題点や課題の抽出を進め、改善策をも射程に入れた検討が必要となろう。 こうした研究活動の成果の一部として、「東南アジアにおける人身取引と『重層的ガヴァナンス』」を執筆し、2013年10月に出版された『共鳴するガヴァナンス空間の現実と課題:「人間の安全保障」から考える』(松下冽・山根健至共編著、晃洋書房)に掲載した。また、当該年度の研究では、こうした人身取引対策を、セキュリティ・ガヴァナンスという観点から把握することを試みることで、研究の理論的な展開に可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、東南アジアにおける人身取引対策のガヴァナンスの構造を、とりわけ市民社会の役割や機能の実態に焦点を当て考察することである。 当該年度の研究においては、リージョナルなガヴァナンスを構成する日本やフィリピンにおける市民社会組織の役割や越境的な活動についての調査は順調であり上述したような成果があがっているが、時間の都合上、マレーシアにおける調査に課題を残している。この点について改善が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、引き続きフィリピンや日本の市民社会組織の取り組みとそれらの連携、および政府や国際組織との関係を調査することに加えて、マレーシアの市民社会組織の調査を現地での資料収集や聞き取りにより実施することで、東南アジア地域内におけるリージョナルなガヴァナンスと市民社会の関係を多面的に検討する。 そして、これまでの研究成果をまとめ、重層的なガヴァナンスにおけるグローバル・リージョナル・ナショナルの各レベルの諸制度・諸アクターの取り組み、相互関係、機能面の実態や、それらと市民社会組織の関係を明らかにする学会報告および論文執筆の準備に取り掛かる。 課題となり得るのは、フィリピンとマレーシアの市民社会組織の取り組みの有機的な連携の存在が、期間内の調査で確認できるかどうかである。そのため、フィリピンのマニラ首都圏および、マレーシアのクアラルンプールでの調査に重点を置いて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は、海外での調査をフィリピンとマレーシアにおいて実施する予定であったが、訪問先の都合などによりスケジュールの調整が難航し十分な調査時間が確保できず、フィリピンでの調査のみにとどまった。そのため、次年度使用額が生じた。 当該年度に実施できなかったマレーシアでの調査を、次年度に実施するため、渡航費や滞在費として使用する。
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