2013 Fiscal Year Research-status Report
パテントプールの安定性とその形成過程に関するゲーム理論分析
Project/Area Number |
24730163
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岸本 信 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (00610560)
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Keywords | ゲーム理論 / 交渉 / 特許権 / ライセンス契約 |
Research Abstract |
本年度は、特許権のライセンス料交渉を、別払いを許さない協力ゲームとして定式化し、ライセンス料の徴収方法(一括払いライセンス料と従量払いライセンス料)についての比較を行った。主要な結果として、交渉を通じて特許技術をライセンスする際に、特許権者は、従量払いライセンス料を採用したほうが望ましいことを示した。現実の特許権のライセンス契約でも従量払いライセンス料が多く採用されており、現実と整合的な結果を得ることが出来た。この研究は、査読付き国際学術誌である”Mathematical Social Sciences”誌から刊行され、協力ゲームとしてのモデル化の違いが特許権のライセンス契約に与える影響を明らかにしたため、パテントプールの安定性を分析する上で有益な知見を得ることが出来た。 また、前年度に引き続き、パテントプールにおける特許権者間のライセンス料配分を考える基礎とするため、潜在的なライセンシーによる提携行動が可能な場合と不可能な場合を考慮して、一括ライセンスにより特許権者たちが得ることのできるライセンス料を明らかにする研究も行った。提携行動が不可能な場合については、考察中であるが、提携行動が可能な場合には、特許権者とライセンシーとの間で安定的なライセンス契約が締結される状況は限られたものになることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した通り、研究課題の目的を達成するための基礎研究(交渉を通じた特許権のライセンス契約)については、順調に結果が出ており、新たな知見を蓄積することが出来た。その研究成果の一つは、査読付き国際学術誌から刊行された。また、他の研究についても、より詳細な考察が必要ではあるが、順調に分析が進んでおり、結果が導出され次第、論文としてまとめる予定である。研究課題の目的であるパテントプールの安定性を分析する際には、特許権のライセンス契約だけでなく、ライセンス料の配分についても考察を行う必要があり、この基礎研究で得られた結果は研究課題を遂行する上で有益なものである。この知見をもとにして、パテントプールの安定性についても、現在、モデル分析を行っている。 また、研究を効率的に進めるために、日本経済学会や日本オペレーションズ・リサーチ学会などの関連学会に参加し、研究成果の報告や情報収集を行った。さらに、それら関連学会の参加者と研究課題へのアプローチや今後の方向性について議論を行い、研究課題の目的を達成する上で有益な多くの知見も得ることができた。 それゆえ、本研究課題は、おおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度に引き続き、研究課題に関する基礎研究を行いながら、パテントプールの安定性を研究する。パテントプールでは、特許権者間のライセンス料配分を考慮した提携形成の問題を扱っており、モデルが大変複雑になり、解析的に分析することが難しくなる。そのため、より扱いやすいモデルを構築すると共に、数値計算を用いて分析を行う予定である。 また、この研究と並行して、パテントプールに関する最新の研究やその結果を調査するために、関連する論文や書籍の精読を行うと共に、関連する学会(日本経済学会や日本オペレーションズ・リサーチ学会など)や研究会(法と経済学ワークショップ(一橋大学)など)に参加し、情報収集を行うことにより、モデル化や分析に必要な知識を習得する。さらに、研究成果が導出され次第、それら学会や研究会で研究報告を行い、参加している研究者たちとも議論を重ね、そこで得られた知見を研究に反映させることにより、より円滑に研究を進める予定である。
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