2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
丸山 亜希子 流通科学大学, 総合政策学部, 准教授 (00508715)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サーチ理論 / 両方向サーチ / 学習 / 不完全自己認識 |
Research Abstract |
本年度は、2方向サーチにおいて、両側(労働市場でいえば、雇用者と労働者、結婚市場でいえば男性と女性)の主体の自己認識が不完全な場合のサーチ活動について分析した。この場合、主体は出会う相手が学習中であることも考慮に入れて相手探しの最適戦略、すなわち留保水準(受諾する最低の賃金や魅力の水準)を決めなければならない。留保水準については多くの計量分析で「サーチ期間が長くなるにつれて留保水準が徐々に下がる」ことが報告されており、サーチ期間に伴う留保水準の動きを調べることは、サーチの分野では理論的にも計量的にも主要な問題である。本年度は、主体の生来のタイプを2タイプとしてモデルを構築し、学習行動が主体の留保水準決定にどのような影響を与えるのかを調べた。 得られた結果は以下の通りである。主体は出会った相手から断られると留保水準を下方に修正する。一方、主体は出会った相手からオファーをもらうと留保水準を上方に修正する。特に、この上方修正は片側に不完全自己認識主体がいる場合には起こらない結果で、両側に不完全自己認識主体がいる場合にのみ生じる。さらに、2方向の不確実性がある場合、①自分のタイプに確率を付すことと、②不完全自己認識の他者が市場に存在する、という2つの要素も主体の留保水準に影響を与える。まず、自分のタイプに確率を付すことで留保水準は完全認識の場合と比較して、高くなる場合や低くなる場合がある。次に、不完全自己認識の他者が市場に存在すると学習機会が増え、これにより主体の留保水準は引き上げられたり引き下げられたりする。さらに、不完全自己認識の他者の拒否は学習が終了した場合の結婚をも遅れさせるため、結果、主体たちの留保水準を引き上げる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は自己に関する学習がランダムサーチに与える影響を示し、市場でのマッチングに洞察を与えるものである。この場合、諸仮定 (i)主体のタイプ数、(ii)不完全自己認識の主体が2方向サーチの両側にいるか、片側か、(iii)マッチ形成後に受け取る効用が移譲可能か否か、によって、複数のケースの分析が考えられる。本年度は、当初予定していた重要と思われる3つのケースの分析のうち1つの分析について、ディスカッションペーパーの発行まで行うことができた。しかしながら、本年度は妊娠により学会やセミナーに行かなかったため、次年度にこれらに参加し、本年度の研究内容に加筆修正を加え、査読付き英文雑誌に投稿する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の研究内容を学会やセミナーの参加を通じて意見交換を行い、加筆修正を行った上で、査読付き英文雑誌に投稿する。 また次の研究として、片側不完全自己認識主体のケース(例えば、男性は所得や社会的地位によって自分のタイプを知っているが、女性は家で働く場合が多く自分のタイプを把握できていないようなケース)のn(≧2)タイプのモデルを構築し、各タイプの留保水準及び市場均衡でのマッチングを調べる。さらにこのモデルにおいて、多くの計量分析で報告されている「サーチ期間が長くなるにつれて留保水準が徐々に下がる」ための条件を示したい。この研究も学会や研究会等の参加を通じてブラッシュアップしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は妊娠により学会や研究会に行かなかったため、次年度に行く予定である。また、本年度使用を予定していた英文校正費用についても、次年度の学会・研究会参加後に研究内容に加筆修正を行った後に使用する。
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Research Products
(2 results)