2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730164
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
丸山 亜希子 流通科学大学, 総合政策学部, 准教授 (00508715)
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Keywords | overconfidence / two-sided search / underconfidence |
Research Abstract |
本研究は、若く経験の浅い主体が、サーチ活動を通じて自己のタイプを学ぶような状況を想定しており、「主体が自己のタイプを知らない」という情報構造を、ランダムサーチモデルに応用し、その学習が与える他者のサーチ活動や市場のマッチングへの影響を明らかにするものである。 H25年度は、学習を伴わないが自分のタイプに関する初期の信念(belief)が合理的でない主体のサーチ活動の分析について、論文が公刊された。その論文では、自己のタイプ(労働市場での「能力」、結婚市場での「魅力」)について過大・過小評価している主体を想定し、彼らの過大・過小評価が、他者のサーチ・マッチング行動へ与える影響を明らかにしたものである。学習がない場合、ある主体の過大評価・過小評価はともに、結婚市場では男女の相互作用を通じて、労働市場では、企業と労働者の相互作用を通じて、最も下のタイプの者の結婚や就職を妨げることが明らかになった。この分析結果は今後、学習を導入する際、初期の信念のサーチ行動への影響と、学習によるサーチ行動への影響を区別するのに重要な意味を持つ。学習を導入する際、学習プロセスによって、たとえ学習行動や初期の信念が合理的なものであっても、主体は過大評価・過小評価のような行動をとると考えられる。現在のところ、学習を導入すると、過大評価にみえる行動は学習がない場合と同様の結果を導くが、過小評価にみえる行動は、学習により、最も下のタイプの者まで影響を与えないことが判明している。今後はこれらの学習導入後のモデルの計算結果をまとめ、学会発表および査読付き英文雑誌へ論文を投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は自己に関する学習がランダムサーチに与える影響を示し、市場でのマッチングに洞察を与えるものである。本年度は学習導入の際に重要なベンチマークとなる、学習のない、初期のビリーフが非合理なケースの分析の論文が公刊された。 また、本研究では2方向サーチモデルを考えているため、自己のタイプを知らないという不完全情報の主体が①片側にいる場合、②両側にいる場合の二つのケースが考えられる。現在のところ、①のケースは主体が垂直方向に異質な3タイプのケースについて、モデルの精緻化と分析が終了し、論文を仕上げ、査読付き英文雑誌に投稿中である。また、②のケースについても、最も単純な2タイプの異質な主体のケースについて、モデルの構築および分析・計算が終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
自己のタイプを知らないという不完全情報の主体が2方向サーチの両側にいる場合について、異質な主体を2タイプに限定した分析は終了しているが、モデルが単純すぎるため、今後3タイプもしくはnタイプの主体を想定したモデルに拡張し、分析を行う。 また、片側に不完全情報の主体がいる場合についても、現時点では3タイプのケースが分析し終わっているので、nタイプに拡張し新たなインプリケーションが得られるかを検討する。 いずれも、分析が終了後、論文を作成し、学会発表、研究会・セミナー発表にて意見交換をした上で加筆修正し、査読付き英文雑誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
産後休暇および育児休暇により平成25年01月27日~平成26年03月31日まで研究を中断していたため 初年度は妊娠により学会・研究会に行かなかったため、本年度は学会発表、研究会発表に積極的に参加する。また、引き続き分析を行うために、PC、PCソフト、プリンタ、書籍の購入、論文投稿に必要な英文校正費用に使用する。
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