2012 Fiscal Year Research-status Report
オープン・ソース・ソフトウェア供給インセンティブの解明:公共財供給理論による分析
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24730165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
篠原 隆介 法政大学, 経済学部, 准教授 (40402094)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 公共財 / 公共財の私的供給 / オープン・ソース・ソフトウェア |
Research Abstract |
ソフトウェア・エンジニアによるオープン・ソース・ソフトウェア(OSS)の自発的開発インセンティブを探るため、公共財の私的供給モデルに基づいて分析を行った。本年度は、OSSとそのアプリケーション(OSSを搭載するコンピュータなど)間には、機能面において強い補完関係が存在することに注目し、この補完関係が、OSSの自発的な開発インセンティブに、どのような効果を与えるのか、明らかにした。 本研究では、OSSを公共財、OSSと関連付けられたアプリケーションを私的財として捉え、プレイヤー(OSSのユーザー開発者)が、経済の初期時点において一定の資源を保有しており、その資源をOSS開発とアプリケーション開発に、それぞれいくら投資するのか決定するゲームを分析した。このようなゲームにおいて、1.プレイヤーの自発的貢献により実現する資源配分は、「個人実現可能配分集合」の中でパレート効率的であり、ある種の次善解となるが、2.「社会的実現可能配分集合」の中では必ずしもパレート効率的ではなく、この意味において、自発的な貢献行動が最善な社会状態を実現するわけではない。しかし、3.プレイヤー達が、自発的に自らの持つ資源を、彼らの間で移転・交換することが可能である場合には、社会的実現可能配分の中においてもパレート効率性を実現する可能性がある。また、4.上記の1.~3.の結果は、ソフトウェアが公共財ではない場合、例えば、一部のコードをインターネット上に公開するようなソフトウェアの開発を考えた場合おいても、成立することが明らかになった。 以上から、ソフトウェアとそのアプリケーションの間に存在する機能面における強い補完関係は、次善、最善を問わず望ましい資源配分を実現する程に強いインセンティブをソフトウェア開発者に与えると結論付けることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OSSとそのアプリケーションの間に存在する機能面における強い補完関係に注目した研究は、当初の研究計画では、1年半程度の時間をかけて行う予定であった。この研究において、若干の拡張研究を行う必要があるが、現時点において一定の成果を得ている。したがって、研究1年目の当初の研究計画を十分に遂行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を効率的に遂行するため、国内外の学会・研究会での成果を報告と、研究者の間での意見交換を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内外の研究者との意見交換のための旅費に充当する予定である。
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